「クツニサクトンクトン」についての考察

この物語で一番分かりにくいのは、クルミの木でヤナを作るとなぜか水が濁って、
サケたちが嫌がるのかという点です。クルミの木の皮は染料としても用いられました。
クルミの木の皮を煎じると黒い汁が出るので、それを使って黒い色に染めるのに使わ
れたのです。

また、その染料は毒を持っていました。
こうしてみると、クルミの木の皮で杭を作り川の水源に立てれば、その皮から黒い汁が
出て、しかも、それは毒になって魚を中毒死させることになったのだということが分かり
ます。黒い汁はおそらくタンニンではないかと考えられます。

そしてここで学んでもらいたいことは、アイヌの地獄と、私達の考える地獄は同じではない
ということです。地獄は仏教用語であり、アイヌの世界観とは異なります。

アイヌ民族が死後に行く世界は、先に死んでいった先祖たちが暮らしている楽土(楽しい世界)
だと信じられています。そこではこの世と全く変わらない生活が営まれているので、彼らは
死を恐れないといいます。ただ1つ異なるのは、全てが反対だという点です。
この世の夏は、あの世の冬であり、この世の昼はあの世の夜だといいます。
そのため、夏に亡くなった人に、あの世は冬で寒いのだからと暖かい衣類を持たせることも
ありました。

「あの世」は、明るく楽しいイメージだったのですね。
では、アイヌ民族の地獄とはどのようなものなのでしょうか。
地獄とは言わず、奈落の底というような呼び方をしていました。
奈落の底とは本来、魔物が行く地下世界であって、たとえ悪行の限りを尽くす人間のように
見えても、実は、この小男のように人間に化け身した魔物なのではないでしょうか。

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