「捨てないでくれぇ!捨てないでくれぇ!!!」
ユウタに向かって、つくも神の桶が叫びます。
桶は、もうぼろぼろで繕いようがありませんでした。

「どうしよう…」
ユウタは困りました。
桶を河童へ差し出します。

ユウタから桶を受け取ると、河童は言いました。
「きっと、こいつも長い間この家で働いてきたんだろう。
 せめて一緒に供養してあげよう」

桶を置いて、河童が手を合わせました。
ユウタも河童の真似をします。

「捨てないでくれぇ…捨てないでくれぇ…」
桶の声が弱くなってきました。
そして最後に言いました。

「大切にしてくれて、ありがとう…」

それきり桶の声はぴたりと止みました。