ユウタが見る先には、黒くて大きな妖怪が頭を出していました。

「海坊主だ…」
河童はそう言いながら、陸の方へ戻ろうと船を向け始めました。

ユウタは、名残惜しそうに言います。
「もっと近くで見たいよ」
「だめだ。だめだ。」
河童は、陸の方へ向かって急いで漕ぎます。

海坊主が振り向きました。
じっと、2人を見つめています。
それを無視して、河童が再び漕ぎ始めました。

「海坊主に会うと、海が荒れるんだ。酷いと、船を壊されちまう」
河童が言います。
「そうなんだ…」

「おいらは、船が壊れても泳げるんだけどな。ユウタに溺れられたら困るんだ」
河童は、照れながら得意げに言いました。