[ギリシア美術] 《幾何学様式(きかがくようしき)時代》 紀元前11世紀中頃、 ミュケナイ美術とは異なる特徴を持つ陶器が出現する。 それらの陶器は、それまでのフリーハンドによる装飾ではなく、 器の面を黒線などによって区分した装飾帯に、 波状の線やコンパスによる同心円文を配置した 簡素ではあるが構築的な装飾を持っていた。 これらの陶器装飾法はその後の幾何学装飾陶器が展開する特性を より明確に予兆していることから原幾何学様式と呼ばれている。
《アルカイック美術》 紀元前7世紀中頃から展開するアルカイック美術は、 前時代の蓄積の上にさまざまな試みが連続的に具体化されていく ギリシア美術のもっとも創造力に満ちた時代である。 今まで直立不動の姿勢を守っていた像は、 しだいにより自然な骨格と筋肉を持つ人体像へと発展し、 形式の規制による内的充実を示していった。
《クラシック時代》 紀元前5世紀後半の彫刻は、直立不動の硬直した姿勢から、 片方の足に体重をかけ、もう一方の足はバランスをとるだけの 安らぎに満ちたポーズへと発展する。 この時代に生きたポリュクレイトスは、体の線をS字型に曲げ、 静止像の中に動き(生命感)を与えることに成功する。 神々と人間が共有する人体が、 秩序と永遠の命を兼ね備えて表現されたのである。
《ヘレニズム時代》 紀元前3世紀中頃から、富裕(ふゆう)な市民は住宅を壁画で装飾し、 庭に彫刻を置き、豪華な装身具を身に着けるようになる。 それは宮廷美術のまねであり、流行であった。 ミロのビーナスはこの時代の古典主義復興によって生まれた作品である。 ローマ時代の文筆家が、 「美術は紀元前3世紀に滅亡し、紀元前2世紀中頃に復興した」 と記しているが、これは美術の大衆化の結果、 古典主義美術の伝統が一時途絶えたことを指している。 ミロのビーナスは、そのような時代に作られたものである。 |