春に見られる星座
<黄道十二星座以外にも、空には沢山の星座が存在しています。
それぞれ違う物語を持って、古代の人々の思想や背景を今に伝えています。
春に見える他の星座で、神話と関わりのあるものをあげてみました。
春の星座
おおぐま座 《大熊座》
【英名:the Greater Bear】
全天で三番目に大きな、わかりやすい星座。北斗七星が目印
由来:
アルカジアの森に住む妖精カリストは大変な美貌の持ち主で、最高神ゼウスの寵愛を受け、やがてアルカスという男の子を生みました。ゼウスの妻ヘラはこれを妬んで、カリストをクマの姿に変えてしまいました。
やがて成人した息子アルカスに出会ったカリストは、森の中で息子を抱きしめようと近づいていきましたが、クマがもとは母親であるとは知らないアルカスはカリストを弓矢で射殺してしまったのです。
これを見たゼウスは急いでアルカスを小熊の姿に変え、二人を星座にしました。
こぐま座 《小熊座》
【英名:the Little Bear】
方角を知るのに大変役に立つ北極星が尾になる、小さな星座
由来:
大熊座カリストの息子、アルカスを象ったとされる星座。(大熊座を参照)
うみへび座 《うみへび座》
【英名:Hydra】
全天で一番大きな星座。蛇を象っているだけあり、天球の円周1/4以上にも達する長さです
由来:
怪力ヘラクレスの冒険の1つに登場するヒドラが星座になった姿です。
アミモーネの沼に9つの首を持ち口から毒の息を吐く怪物ヒドラが住んでいましたが、ヘラクレスに
寄って倒されてしまいました。首を切り落としても切り口から新しい二つに分かれた首が再生するヒドラの
首を、ヘラクレスは焼き払うことによって首1つだけとし、退治しました。
コップ座 《こっぷ座》
【英名:the Cup】
うみへび座としし座、おとめ座の中間あたりにある、小さな目立たない星座
由来:
コップ座の由来には諸説あり、酒と狂乱の神ディオニュソス(バッカス)のさかずきとも、
太陽神アポロンのゴブレットとも魔女メディアの杯とも言われます。
エジプト地方では、この星座が見えるようになる頃ナイル川の水かさが最高に達していることから、
水が引き始める目安として重要視されたといわれています。
からす座《烏座》
【英名:Corvus】
夏の夜空に見られる小さな星座。
由来:
太古アポロンの使いであったカラスは、銀色の美しい羽を持ち、言葉を話すこともできました。
カラスはアポロンの妻コローニスの見張りをするよう言いつけられていましたが、ある日道草を食い、
アポロンに叱られました。そのときカラスはコローニスが浮気をしていたとアポロンに進言しましたが、
それは言い訳のための嘘だったのです。
アポロンは怒ってコローニスを殺してしまいましたが、後々嘘がばれたカラスはアポロンの怒りを受け、
言葉を奪われて銀色の羽を真っ黒にされ、夜空に張り付けにされたといわれます。
アラビア地方では、砂漠で張る天幕の形に見立てて「アル・キバ」と呼ばれます。
らしんばん座 《羅針盤座》
【学名:pyxis】
有名なアルゴ船座の一部
由来:
らしんばん座は近年作られた星座ですが、もとはアルゴ船座の一部です。
アルゴ船の話はギリシャに伝わる神話のひとつですが、
余りに大きい星座だったので、フランスの天文学者ラカイユが4分割したのです。そのうちのひとつが
羅針盤座です。
イアルコスの町の王子イアソンは、叔父によって奪われた王位を返還してもらうべく、
持つものに幸福と繁栄をもたらすと言われていた東の国コルキスの黄金の羊の毛皮を取ってくることになりました。
イアソンはアルゴスという大工に大型船(アルゴ船)を作らせ、ヘラクレス、双子のカストル・ボルックスなどが名を
連ねる50人の勇者とともに幾多の苦難を
乗り越えて金の羊の皮を手に入れ、王位を奪還したということです。
ほ座 《帆座》
【学名:Vela】
らしんばん座の南、天の川が星雲上になっている辺りに位置する大きな星座。
由来:
アルゴ船座を、ラカイユが4分割して作ったうちの、一つです。(羅針盤座を参照)
かみのけ座
【英名:Come】
<ぼんやりと光るMel.111散開星団が美しい星座。
由来:
エジプトの王妃ベレニケは近隣の国でも有名になるほど世にも美しい髪の持ち主でしたが、
あるとき、エジプトと隣国との間に戦争が起こり、夫であるエウエルゲデス王は自ら戦に出立しました。
夫の無事と、国の勝利を祈ったベレニケは自ら髪の毛を切り落とし、アフロディーテにこれを捧げました。
これを見た最高神ゼウスが、王妃の優しい心音とその髪の美しさを気に入り夜空に上げて星座にしたと
言われています。
うしかい座 《牛飼座》
【英名:the Herdsman】
スピカと二つセットで春の夫婦星とも呼ばれる1等星アルクトゥルスが美しい星座
由来:
大神ゼウスに天を支える役目を使わされた巨人アトラスの姿と言われています。
巨人族はゼウスとの天界をめぐる争いに敗れましたが、そのときゼウスはアトラスに永久的に天を支える
過酷な役目をいいつけたのだといいます。
のちにペルセウスが妖怪メドゥーサを退治したとき、天を支える仕事に疲れ果てていたアトラスはペルセウス
に頼んでメドゥーサの毒によって自分を石にしてしまったそうです。
モロッコからチュニジアまで伸びる山脈は「アトラス山脈」と呼ばれ、以上の神話が名前の由来となっています。
ギリシアからこの山脈が丁度天空
を支えているように見えたことが背景となっているのでしょう。
ケンタウロス座
【英名: the Centaur】
初夏、南の地平線近くに姿を現す星座。
由来:
上半身が人間で下半身が馬の形をしているケンタウロス族の、フォロスの姿です。
乱暴なケンタウルス族は人々に嫌われていましたが、
その中でも心優しいフォロスは、ヘラクレスと酒盛りを
していました。そこに他のケンタウルス族が乱入して大暴れしたため、
ヘラクレスは毒を塗った矢でケンタウロス達を皆殺しにしてしまいました。
フォロスはひとり生き残りましたが、仲間達の埋葬をしているとき、誤って毒矢を自分の足に落としてしまい、
死んでしまいました。