Hansen's disease

ハンセン病



病原菌:らい菌(Mycobacterium leprae)

ハンセン病の歴史は、実は紀元前に始まります。
外見上の問題、特に顔面・手足の変形、異臭、盲目などで全世界から偏見・差別を受けてきました。
住民・社会から疎外されたり、隔離されたり、患者だけでなくその家族も差別の対象になりました。

以前は、らい(癩)・レプラ・かったい・天刑病などと呼ばれてきましたが、
現在は、「ハンセン病」が正式な病名で、他の呼び方は偏見・差別を助長するといわれて使用しません。
英語でも、以前はleprosyと呼ばれてきましたが、
偏見・差別のない病名にするために、現在ではHansen's diseaseを使うことが多いです。

この菌の感染力はとても弱い上に患者との親密な接触がない限り感染もしません。
なのでよく見られるのは親から子への感染で、この場合も親から乳幼児への感染が比較的多い程度です。
また、感染しても発病するのはとても少ないです。

らい菌は、結核菌と同じ抗酸菌の仲間で、菌の生存に必要最小限の遺伝子しかもっていません。
なので、ヒトの細胞内に寄生することが必要になり、人工培養には成功していません。
感染するとらい菌はリンパ管血行を通して全身に広がりますが、きわめて慢性的な経過をたどります。

感染経路
ヒトからヒトへの感染のみです。
菌をたくさんもっている未治療の患者からの飛沫感染が感染源といわれています。
上でも書きましたが、感染時期は、免疫能力の弱い乳幼児期がもっとも多く、
その人のらい菌に対する免疫能力、栄養状態、吸い込む菌の量、衛星・環境状況などの要因も関係します。

潜伏期間
潜伏期の多くは2年から7年ですが、短い場合や長い場合もあります。
潜伏期の後、顔などに知覚麻痺がおこり皮膚が脱色し、色がやや薄くなってしまいます。

症状
感染と発病には、大きな違いがあることがわかっています。
地域や感染時の時代によって、有病率が大きく変化します。
発病後の症状も、個人の菌に対する免疫能によって、大きく異なります。

かゆみや痛みなど、自覚症状のない、治りにくい皮疹が多いです。
進行すると、皮疹の数が増したり、浸潤が高度になり、浮腫などもおこります。

しかし診断・治療が遅れると、末梢神経障害が起こり、
皮疹部、または末梢神経の走行にほとんど一致して知覚障害と運動障害が起こります。
知覚障害が起きて痛みを感じなくなると、治療がどんどん後手に回ることになります。
心臓や肺、肝臓など内臓が侵されることはきわれてまれなことです。

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