Cholera

コレラ


病原体:コレラ菌(Vibrio cholerae)

コレラとは、細菌性の感染症です。
細菌性のコレラ菌によって起こる、急性胃腸炎です。
コレラ菌に汚染された水熱が十分に通っていない魚介類の飲食によって感染します。
日本国内にはない感染症ですが発展途上国では日常的に流行している病気です。

コレラ菌が作り出すコレラ毒素によって、激しい下痢などの症状を引き起こします。

コレラ菌はグラム陰性桿菌です。
大きさは3×0.3μmできわめて活発に動き回ります。
コレラ菌は好気性でよく増殖します。
一般の腸内細菌に比べるとはるかに抵抗性が弱いため
55℃、10分の加熱で死滅し、酸や乾燥にもきわめて弱い性質を持っているので日光も殺菌することもできます。
また、健康な人の胃も胃酸による殺菌効果をもっていますが、
一部の人では胃酸の殺菌効果が期待できないので注意が必要です。

コレラ菌はO抗原性により二つに分類されます。
O1抗原をもつコレラ菌がO1型コレラ菌のことであり、
O1抗原をもたないコレラ菌をNAGビブリオと言います。
01型コレラ菌のほうが症状が重いです。
しかしNAGビブリオの中でも0139コレラ菌はひどい症状が起きるので
01型コレラ菌と同様に「コレラ」とされています。

WHOの正式な報告では、
2006年、コレラ患者は52カ国から23万6896人という報告があったそうです。
しかし、実際の患者数は、この数値を上回るだろうと言われています。

コレラについて学ぶ際には、コレラの病原体であるコレラ菌が重要になります。
コレラ菌には、菌の表面にあるO(オー)抗原たんぱく質の種類の違いによって、
「O1(オーワン)」と「ノンオーワン」があります。
O1菌・O130(オー139)菌のみが毒素を作りだすので、このO1菌・O139菌だけが「コレラ菌」として扱われてきました。

またO1コレラ菌は、1960年ごろまでに流行していたコレラ菌と、
現在流行しているコレラ菌とでは、性質が多少ですが異なっています。
生物学性質の違いとして、かつてのコレラ菌をアジア型(古典型)コレラと呼んでおり、
それに対して現在のコレラ菌は、エルトール型コレラと呼ばれています。

アジア型(古典型)コレラは、大流行を何度も何度も繰り返しました。
病原性がとても強く、世界中で何百万人が犠牲になりました。
エルトール型コレラは、1961年ごろからアジア地域で発生しました。
感染力がとても強く、アジア型コレラに替わってすぐに広がってしまいました。
しかしアジア型コレラに比べては病原性が弱いので、死亡率は2%といわれています。

日本人の場合は栄養状態がよいので、胃腸の弱い人や老人、乳幼児以外はほとんど死亡することはありません。
しかし、感染力が強いために感染しないための注意が必要です。

感染経路
コレラは、菌に汚染された水・氷・食品を摂取することで感染します。

潜伏期間
2〜3日間(通常であれば、1日〜3日間)の潜伏期間

症状
コレラ菌は小腸で増えて、コレラ毒素を作り出します。
コレラ毒素は小腸の細胞から大量の水・カルシウムイオンなどの電解質を流れ出し、
それによって激しい下痢が起こり、大変な脱水状態になります。

また、アジア型(古典型)コレラでは、米のとぎ汁様の水様便と表現されていましたが、
エルトール型コレラの場合では、症状は軽く、幅広い下痢が主になっています。
嘔吐を伴うこともありますが、発熱・腹痛などはほとんどありませんが、体温が低下します。
頬骨が突出す、声がかするなど無表情なコレラ顔貌となります。
さらに進行すると、血圧低下、低体温、痙攣などが現われてきて、死んでしまうこともあります。

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