ペスト Plague
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病原体:
ペスト菌(Yersinia pestis)
イスタンブールから地中海沿岸地域に流行していったペストは、
48年になると、ヨーロッパ内陸部へ拡大していきました。
この年の後半にはイングランドでも流行し、
49年には北欧やポーランド、51年にはロシアにまで拡大していきました。
この大流行は53年ごろまで続きました。
ペスト(別名
「黒死病」)は、ペスト菌の感染によって発生する急性伝染病のこと。
ペスト菌は、本来は
リスやネズミ類の病原菌であり、
鼠類についたノミがペスト菌を含んだ血液を吸って人間に伝播します。
つまり、感染した動物の血液を吸ったノミで増殖した菌が人間をかむことであったり
あるいはノミから出た菌が人の傷口に付着して感染します。
世界中で歴史的にも古くから大流行を繰り返し、
高い死亡率に加えて、皮膚が黒くなる症状から、「黒死病」と呼ばれていました。
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感染経路
しかし、その感染経路は様々です。
病原体(つまりペスト菌)を保有した
ノミに刺咬されて感染するのが、78%。
ペットなど感染小動物の体液を介して傷口から感染するのが、20%。
ペスト菌を保有する
エアロゾルの吸入が、2%。
どの感染経路にしても、
ノミがキーワードになります。
ペスト患者の発生は、
ノミの活動期に集中しています。
また、ペスト患者の皮膚・粘膜から伝染し、
飛沫(ひまつ)伝染もします。
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分布
ペストの感染は世界的に分布されてはいますが、
日本では、1926年以来、ペスト患者の報告はありません。
1980〜1994年の15年間に、
WHOによって正式に報告された世界のペスト患者は、
24カ国で18,739人、そのうち死亡者は1,852人にのぼります。
また、2003年には、9カ国で2,118人の患者、そのうち死亡者は182人でした。
患者のほとんどはアフリカですが、
アフリカ・アジア・アメリカには、ネズミなどが感染している区域もあり、
そこにヒトが入り込んで、ノミに刺されて感染することがあります。
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潜伏期間
発症までの
潜伏期間は、
2〜10日と言われています。
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症状
また、臨床症状として、
ヒトペストは、
腺ペスト・敗血症ペスト・肺ペストに別けられます。
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腺ペスト
ヒトペストの80〜90%がこれにあたります。
ノミに吸血され、その後通常なら
6〜10日間の
潜伏期間を経て、
吸血された部分に近いリンパ節が腫れて痛み、皮膚の出血斑や高熱、頭痛、悪寒、倦怠感、
不快感、食欲不振、嘔吐、筋肉痛、疲労衰弱などが現れ、治療が遅れると敗血症となります。
その際は、死亡率が50〜60%にもなります。
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肺ペスト
ヒトペストでは、少数です。
腺ペストの末期や、敗血症ペストの経過中に起こります。
ペスト菌が肺に移行した際、肺ペストになると考えるといいと思います。
2〜3日間の
潜伏期間の後、倦怠感、咳、痰(たん)、発熱などの症状が現れ、
肺炎を起こして呼吸困難となり、また
感染力が強く、重症となるケースが多いです。
肺ペスト患者から排出されたペスト菌を含む
エアロゾルを吸い込んで2次的に発症します。
治療・診断が遅れるとほぼ100%死亡するといわれています。
しかし、感染初期に治療を開始することができれば、死亡率は低くなります。
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敗血症ペスト
ヒトペストでは約10%を占めます。
腺ペストから敗血症への移行によって起こります。
ペスト菌が血液の流れに乗り、からだ全身にまわってしまい、
急激なショック症状、DIC(昏睡・紫斑など)が起こります。
死亡率は、抗生剤での治療を行わない場合、
腺ペストでは60〜90%、肺ペストでは100%と高い確率になっています。
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