遺伝子工学01



遺伝子工学(バイオテクノロジー)とはなんなのか?

「遺伝子工学(バイオテクノロジー)」は、1970年代にアメリカで発見され、遺伝子組み換え食品、病気の診断薬、治療薬などを通して馴染みになってきている。

しかし、いったい遺伝子工学とは何なのか?

まず、遺伝子とは、生物の遺伝をコントロールする遺伝物質、またはDNAのことで、細胞にどんなタンパク質をつくるかを命令している。
※厳密には多少異なるため、遺伝子≠DNA
次に、工学とはエンジニアリングのことであり理学とは異なる。つまり、サイエンスで解明された仕組みを応用、または利用して、私たちの生活を向上させるための製品やサービスを作り出すことである。
それに比べ、理学とはサイエンスのことで、物後緒の仕組みを追求して解明することを目的としている。
つまり、サイエンス(理学)では「基礎」を、エンジニアリング(工学)では「応用」として考えているのである。
この2つを組み合わせ考えると、遺伝子工学とは「ある生物の遺伝子を別の生物に移すことによって、私たちに有用な製品やサービスを提供すること」ということがわかる。




しかし、このバクテリアに感染するバクテリオファージという微生物がいる。大腸菌にはいくぶん性質の異なる親戚が、およそ数千もいる。この親戚のことを株(ストレイン)と呼んでいる。
バクテリオファージの1つ、λファージはほとんどの大腸菌に感染し、細胞をのっとる。のっとられた大腸菌は、λファージの遺伝子の命令に従ってλファージのたんぱく質を生産させられる。こうしてできたいくつかのタンパク質が組み合わさって新しいλファージがどんどん誕生する。それで、λファージにこき使われた大腸菌はというと、疲れ果てて、哀れにも解けて死ぬ。これを溶菌という。溶菌とは、λファージに無理に働かせられたバクテリアが過労死したものと理解すればよい。
λファージは大腸菌のK株に感染し、溶菌する。K株は普通の大腸菌なので、これは予測通りである。次に、λファージを大腸菌R株に感染させる。すると驚くことにR株に溶菌は起こらない!どうしてかというと、大腸菌R株は侵入してきたλファージの増殖を止めることで、ファージを殺したのだ。
それでは、どんなしくみでR株はλファージを殺したのか?
R株はある特別な酵素をつくっていて、この酵素でλファージのDNAを切ったのである。すなわち、この酵素は侵略してくるλファージのDNAを切ることで大腸菌の身を守ったのである。この特別な酵素を制限酵素と呼ぶ。
もちろん制限酵素を合成するように命令する遺伝子がR株で見つかったが、R株の染色体上ではなく薬剤耐性遺伝子が乗っているプラスミドの上で見つかった。
大腸菌のプラスミドには薬剤耐性遺伝子と制限酵素をコードする遺伝子がある。薬剤耐性遺伝子は抗生物質の攻撃から身を守るために、そして制限酵素はバクテリオファージの侵略から防衛するために使われている。どちらの遺伝子も大腸菌などのバクテリアがせちがらいの世の中を生き残るための武器となっている。


【参考項目】

生物医学(バイオメディカル)をビジネスにした企業をバイオロジカル・ファーマスーチカルスといい、一般には「バイオファーム」という。
バイオファームは遺伝的に改変された生物そのもの、あるいはそのような生物の働きを利用して生産した製品やサービスを顧客に提供している。
具体的にいうと、

@ヒトタンパク質の治療薬への応用
A病気の診断薬キット
B食品への応用
C害虫や序薬剤に強い農作物の開発
Dアルコール生産によるエネルギーの獲得
E犯罪捜査や親子判定などのDNA鑑定に代表される法医学への応用

などが主な売り物。
このようにバイオファームのビジネスは私たちの日常生活に深く関わっている。