遺伝子工学02
では、いったい制限酵素はどのようにλファージのDNAを切るのか?
大腸菌R株を大量に培養して制限酵素を取り出す。(※この酵素は大腸菌をイーコーライ(E.Coli)といい最初に見付かった制限酵素だということから「イコアールワン(EcoR1)」と名付けられた。)
イコアールワンと二本鎖DNAを混ぜたところ、やはりDNA鎖は切れた。しかしDNAはバラバラに切れたのではなく、いくつかの断片ができた。この断片のシークエンスを調べると、DNAはいつもある決まった箇所、ある一定ねパターンで切れていることがわかった。

上下の塩基配列は左から右に読んでも、右から左に読んでも………GAATTC………という部分があり、これはGとAの間で切れる。このような右と左のどちらからもまったく同じに読める文をパリンドロームという。
たとえどんな生物に由来するDNAであってもGAATTCというシークエンスさえあれば、イコアールワンは必ず切ることがわかった。こうして私たち人間は、DNAを切るハサミを手に入れたのだ。
イコアールワンの発見についで、バムエイチワン(Bam H1)、ハエスリー(Hae V)、ピーエスティワン(Pst T)などの制限酵素が続々と見つかった。これらの名前もどんな微生物から取られたかによってつけられた。たとえば、制限酵素場無英知ワンはバシラス属から、ハエスリーはヘモフィルス属から、ピーエスティワンはプロビデンシャ属のバクテリアから採取されたものである。
制限酵素はシークエンスの特別な文字配列を呼んで切る。たとえば、イコアールワンはGAATTC、バムエイチワンはGGATCC、ハエワンはGTTAAC、という6文字を見つけて素早く切る。
気づいている方もいるかもしれないが、「GAATTC」「GGATCC」「GTTAAC」を二本鎖にしてから、右から呼んでも左から呼んでもまったく同じである。こうしてハサミとしての制限酵素はどんどん見つかっていった。
これとは別に、1967年には二本鎖DNAの切断した箇所を見つけて「貼り付ける」DNAリガーゼという酵素が見つかった。
私たちは、制限酵素というハサミとDNAリガーゼというノリを手にしたのである。ノリとハサミがあれば、DNAを制限酵素で切り取り、それをほかの生物から切り取ってきたDNAでつないで、つなぎ目をDNAリガーゼでくっつけることができます。
これが「組換えDNA技術」なのである!!