錬 金 術 の 歴 史  第二講


2−1 紀元前
 錬金術の起源についてはアラビア発祥説や、エジプト発祥説など諸説あり、はっきりした事は判明していない。ただ、恐らくは紀元前のメソポタミア地方ギリシアエジプト及び中近東のユダヤ教系などの冶金学・哲学・医学・物理学・医学などさまざまな学問が、西暦三〜四世紀にアレクサンドリア(エジプト)とその周辺の欧州各国に集まって大成したものと推測される。だが、この段階ではまだ錬金術と呼べるものではなく、もっと実用的な技術に近いものであった。その後はアラビア人により今の錬金術の形に発展し、ローマを通じてヨーロッパに広まった。
 では、アレクサンドリアで錬金術の基礎が大成する以前のものについて、地域別に要約する。

 ・エジプト
 エジプトにはヘルメス・トリスメギストスの元となったものの一つ、トート神が存在するため、また、錬金術史上大きな役割を果たしていることから「エジプトこそが錬金術発祥の地である。」と考える錬金術師も少なくない。事実、錬金術の哲学的側面にはエジプト神話や宗教に影響されたと思われる点も多く、アレクサンドリアの錬金術師たちにも影響を与えてることが見受けられる。更に当時のエジプトは科学技術も進歩しており、これは数種類の薬品(炭酸ナトリウム、ナトロン等)がミイラを製造する過程で必要だったためと考えられる。
 また、宝石加工や、着色金属調合(青銅など)において特に発達しており、当時の文献には人工宝石の作り方まで載っていたとされている。

 ・メソポタミア地方
 この地方は錬金術初期の、技術としての錬金術の重要な基礎となっている。メソポタミア地方も当時はエジプトに負けず技術が発展しており、世界最古の電池(バグダット電池)が発見されたのもこの地方である。

 ・ギリシア
 記録に残っている錬金術関連の文庫から考察するに、錬金術の哲学的側面、つまりフリーメーソン思想系はギリシア哲学の影響を受けていると考えられる。例えば、四元素の理論はギリシアの自然哲学が元となっている。しかし、西暦二四八年から三百五年まで皇位についていたガイウス・アウレリウス・ウァレリウス・ディオクレティアヌス帝が金属加工関連の文章等を勅命で破棄させたので、正確な記録が残っていないため正確な情報は少ない。
 また、四世紀にアレクサンドリアで錬金術が発展する際にはギリシアが多くの貢献をしている。その証拠に当時の錬金術文献の多くはギリシア語で書かれている。

 今回このサイトで紹介している錬金術に非常に酷似した技術は古代中国を筆頭に、アジアでも見ることができるが、これらは西洋の錬金術とはまったく繋がりは無い。
 中国では道教、すなわち気という精気が全ての大本となっている宗教で、錬丹術(中国版錬金術)の研究が行われた。こちらは黄金錬成よりも不老不死が主な目的とされている。こちらの理論は、気を半永久的に健康状態に保つことで不老不死を可能とし、その補助として錬丹(賢者の石)を利用する、というものであった。そして文献によると錬丹なるものは実在しており、古代皇帝たちが服用していたらしい。しかし実際に存在した錬丹とは水銀の事で、古代皇帝たちは水銀を服用してことになる。試す気になれない。
 注:水銀は有毒です。不老不死の効果もありません。間違っても服用しないでください。

 次はアレクサンドリアからヨーロッパへ伝わる経緯を述べる。
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