ロバート・ボイル  第三講

3−4 『死刑執行令状』 ロバート・ボイル

 ボイルの法則で有名なロバート・ボイル。彼は熱力学で功績を残したが、実は化学も研究していて『猜疑的な科学者』という著書がある。
 その中で、彼は「元素とはそれ以上分解できない単一の物質で、世界は様々な元素の組み合わせでできている。それは4元素などではなく、それ以上分解できない物質が見つかればそれが元素だと認めなければならず、それらが物質の原初の単位になる。」と表している。
 それはつまり、銅の元素、金の元素は別々に存在しているので、錬金術師がどうこうしようとも、卑金属は貴金属に錬成できないことを意味している。
 この本を出版したことにより、錬金術師たちが根拠としていた理論が粉砕され、近代化学へと向かっていくこととなる。
 『猜疑的な科学者』という著書は、錬金術の根拠となる部分を否定したので、『錬金術の死刑執行令状』と評された。しかし、ボイルの物質理論は近代化学へとは到達できなかった。さらに、その当時は考えが新しすぎたため、なかなか受けいられなかったこともあり、近代化学へと移行するのはほぼ100年後、ラヴォアジェの時代からである。

 一方、ボイルは病弱で特に視力が悪く、彼の残した読書ノートや実験日誌はほとんどが他人に口頭記述させたものだった。これはつまり彼一人では実験が出来なかったということで、彼の残した業績のほとんどは助手がメインとなって実験していたことになる。生涯で何人に口頭記述をさせたかは不確かだが、彼は裕福であったことがうかがえる。

 彼はフランス語、イタリア語、完璧とはいえないがラテン語まで理解できた。しかし、当時化学書、錬金術書などはほとんどがドイツ語で書かれていた。しかし、『猜疑的な科学者』では度々ドイツ語での引用がみられる。これは彼にはドイツ人の協力者がいたという事で、実際キミストというドイツ人が協力していたと考えられている。

 ボイルにはたくさんの協力者がいたという事で、彼の人望と実力はとてつもなく大きいといえるだろう。
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