品種改良の具体例



品種改良の歴史は長く、人類は無意識のうちに自分たちに有利な特徴を持った品種を作り上げてきました。家畜化や植物の栽培は、数千年前から行われており、時代が下る中で、より意識的に品種改良を行うようになったのです。
 ここでは、品種改良された家畜の例として「ブタ」を、植物の例として「コメ」を扱っていきます。

具体例1 イノシシ

まずはじめに、イノシシとブタを比較してみましょう。

ブタは胴体の長さや大人になるまでの期間などにおいて、家畜用として適しているのがわかります。

品種改良によってイノシシからブタへ
日本各地の遺跡から、イノシシの骨が出土していることから、日本では大昔の石器時代から野生のイノシシが食べられていたことがわかっています。
日本人がいつからイノシシを家畜化したかについては、はっきりとはわかっていませんが、西暦200~600年頃に、大陸から日本にやってきた渡来人が、イノシシを飼育する技術を伝えたのではないかと言われています。

どうしてイノシシはブタになったのか
間はもともと狩猟・採集を通じて、野生のイノシシを食料にしていました。イノシシの肉はおいしかったらしく、積極的に狩られていたようです。
ですが、採りすぎると野生のイノシシの数は減ってしまいます。そこで人間は、人為的にイノシシ同士を交配させて、安定した食糧確保をしようと考えたわけです。
イノシシが雑食性で環境に適応しやすい動物であったことなどの理由により、人間が扱いやすかったため家畜化につながったのだと考えられます。
ただ、問題点もありました。ご存知の通り、イノシシは凶暴で力も強く、そのままの状態では飼いにくかったのです。
そこで人間は、おとなしいイノシシ同士を交配させて、凶暴なイノシシを手なずけていくことにしました。その過程で、長い年月を経てイノシシはブタになっていたのです。

具体例2 コメ

日本人なら必ず食べたことのある「コメ」。あきたこまち、コシヒカリ、ひとめぼれ、ゆめぴりか…などなど、お米にもいろいろな種類があります。 なぜこんなに種類があるのというと、品種改良によって作られたからです。

どうしてコメの品種改良がなされたのか
1つが「自然との戦い」です。
日本は南北に長く、中央に大きな山脈があり、東南アジアからの季節風の影響も受けるなどの理由で気候や日照時間は千差万別です。よって気候や日照時間などのそれぞれの地域に合った品種が開発されたのです。
イネはもともと熱帯気候を好みます。ところが、年によっては夏に気温が上がらないことがあります。すると、イネがうまく育たないことがあります。「冷害」です。
これまでの歴史で、日本人は繰り返し冷害に苦しめられてきました。江戸時代に起きた「天明の大飢饉」、最近では1993年に起きた「平成の米騒動」などは、この冷害によってイネが十分に生育しなかったことが原因です。このように、「寒さに強いイネ」を作ることは、日本人の悲願でもありました。
明治維新を遂げて、近代化が進む中で、安定した食物供給が求められる中で、イネの品種改良も進みました。かつては、寒さに強いイネを集めて、自然交配を繰り返すしかありませんでしたが、20世紀には人工交配の技術も開発され、より「寒さに強いイネ」が作られるようになったのです。

2つめが「より良い味」を追求したためです。
 環境の変化に適応することと同時に、よりよい味を追求する動きも並行して行われてきました。例えば、イネの品種の一つである「ジャポニカ米」と「インディカ米」とでは、以下のような違いがあります。
日本では伝統的に「ジャポニカ米」を生育していたので、「インディカ米」の、パサパサした食感や独特の臭みが受け入れられず、モチモチとした食感や適度な風味が求められるようになりました。
 なので、そうした観点で「おいしいコメ」を作るために、品種改良を重ねていったのです。

代表的なコメの品種
このような歴史を経て、現在日本では様々な品種が商品として流通しています。ここでは、皆さんにも親しみ深い、代表的な品種について紹介します。
 このように、現在私たちが食べているコメは、長い長い時間をかけて、品種改良を重ねてできあがったものなのです。
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