線形動物門に属する生物の総称です。体長は通常0.5mmから4mmほどですが、種によっては数メートルになるものもあります。現在1万種以上が確認されていますが、地球全体では50万種ほどが存在すると推定されており、中には1億を超える種が存在するとの試算もあります。
また、個体数も多く、腐敗したリンゴ1個に9万匹、土壌6〜7mL中に36種1000匹の線虫がいたという記録もあり、私たちの生活に身近な存在と言えます。
体は細長い糸状や筒状で、体節に分かれず、触手や付属肢はありませんが、摂食、消化、感覚、運動、生殖などを行う動物として必要な体の器官は備えています。体表はクチクラに覆われており、棘や剛毛を持つものもあります。
通常は雌雄異体で有性生殖を行いますが、雌雄同体のものや、発育環の一時期、雌だけとなり、単為生殖をして世代交代を行うものもあります。幼虫は4回脱皮して成虫になり、脱皮と脱皮との間に成長します。
線虫の一種であるC. elegans は1960年代に生物学者のブレンナーによって、実験生物学でのモデル実験動物として提唱され、現在では受精卵から約1000個の細胞がある成虫になるまでの細胞分化の過程が全て解明されています。
線虫は、深海、山岳部、極地など、地球上の様々な場所に生息しています。
線虫の多くは、海洋、淡水、土壌の中などに生息し、腐敗有機物、細菌、カビ、他の動植物などを食物としています。ですが、線虫の中には動物や植物に寄生して生息するものもいます。
動物に寄生する線虫は、昆虫などの無脊椎動物や脊椎動物の色々な部位に寄生し、ヒトや家畜の疫病の原因となるものもあります。魚介類に寄生し、食中毒の原因となるアニサキスも線虫の一種です。また、植物に寄生する線虫は、農作物や樹木に悪影響を与えるものもありますが、有害昆虫の天敵として利用されているものもあります。
線虫は海洋の祖先を起源として、淡水や陸上に広まり、地球の様々な場所に生息するようになったと考えられています。線虫はその生息域を世代を経ながら広げ、海洋や淡水に適応したり、陸上に適応したりといった進化を何度も繰り返しました。現在、陸上に生息する線虫の中には、海洋・淡水型を祖先とするものがいたり、逆に現在水中で生息する線虫の中に陸上型を祖先とするものがいたりします。