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ゴミから肥料・飼料に

世界で人口が増え続ける中、食糧不足についての問題が顕著になっています。現在、世界には全ての人が十分な食事を取れるほどの食料が生産されていると言われています。それにもかかわらず、世界では8億2千万人以上、約9人に1人が慢性的な栄養不足です。また、2050年には世界人口が98億人に達するともいわれ、食料需要量は2010年の1.7倍に達するとの予測も出ています。

農林水産省 - 2050年における世界の食料需給見通しの公表について(世界の超長期食料需給予測システムによる予測結果)より)

そのような中で注目されているのが、イエバエを使った肥料の生産です。それを行っているのがMUSCAです。MUSCAでは、旧ソ連の研究と技術を引き継ぎ(買い付け)、開発を続けています。

45年ほど前、旧ソ連が冷戦化でアメリカと宇宙開発競争をする中、当時のソ連の科学者が火星への有人探査計画を立てました。往復でかかる食料を全て宇宙船に積み込むことは難しいので宇宙船内でバイオサイクルを確立する必要があり、様々な微生物や昆虫が試された結果一番効率が良かったのがイエバエだったのです。

しかし、自然界に存在するイエバエを箱に閉じ込めてもストレス過多により卵を産まなかったりすぐに死んでしまったりしてしまいます。しかしその中でもストレスに強く卵を生む個体を約50年間1,200世代によって選別交配させ、ストレス、温度変化、湿度変化などに強いハエを作り上げたのです。

MUSCAの保有するイエバエを使うと、一般的な微生物を使うと数ヶ月~数年かかる堆肥化を1週間で終わらせることができます。また同時に家畜の餌となる飼料も出来上がります。つまり、畜産や農業からでた有機廃棄物を肥料と飼料にし、次の畜産と農業に繋げることができ、食の生産が循環可能になるのです。

イエバエを使った肥料の作成の仕組みはとてもシンプルです。まず、生ゴミや動物の排泄物など有機廃棄物を用意し専用トレーの上にイエバエの卵を撒きます。すると8時間ほどで卵が孵化して幼虫になり、糞尿などの有機廃棄物を分解します。また、幼虫は乾燥させ飼料にします。

魚の餌となる魚粉にイエバエ飼料を混ぜて使用したところ、真鯛の体色やサイズに大きな違いがありました。一般的な魚粉で育った真鯛と比べて体の色は鮮やかで、サイズは40%ほど大きいのです。安全性を立証するため愛媛大学と調べたところ、危険性のあるものは出てきませんでした。養殖魚は生簀の中でたくさんの魚と狭い空間で飼育されているため、ストレスを感じる傾向があります。しかし、イエバエ飼料を餌として食べていた真鯛はストレス値が低いことがわかりました。

また、イエバエ肥料を使って二十日大根を栽培すると、一般の肥料使った場合より身の締まりが良く、粒が揃っているものができました。さらに、一般栽培のものは糖度が2.0~2.5でしたが、イエバエ飼料を使ったものは4.0と約2倍近く高かったのです。

日本国内で排出される畜産糞尿の量は、年間およそ8000万トン、これは東京ドーム約61個分に及びます。そして、この年間8000万トンの畜産糞尿の処理過程で発生する温室効果ガスが、地球温暖化の一因になっていると言われています。畜産糞尿を堆肥化する際に発生するメタンガス・亜酸化窒素は、それぞれCO2の25倍、300倍の温室効果があり、畜産糞尿の処理過程での放出量が国内全体の11%と22%に及ぶことが分かっています。

それに対してイエバエを使った堆肥化は1週間という速さで分解でき、ガスの発生量を99%削減することができます。

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