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ミドリムシで空気・水をキレイに

ミドリムシを燃料や食品などの原料としてだけではなく、二酸化炭素を吸収したり、水質を改善したりするのに活用する事業にも注目が集まっています。

二酸化炭素の処理

二酸化炭素の処理方法

約190の国・地域が批准したパリ協定では、2075年、できれば2050年までには、世界全体で温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることが目標とされています。一方、世界のエネルギー消費量は年々増え続けており、なるべく早い解決が重要です。

二酸化炭素の処理には、様々な方法が考えられており、火力発電所や製鉄所、セメント工場などの排気を処理し、二酸化炭素濃度を高めた上で、地中の帯水層や吸収性の高い石灰層に送りこむ方法がその一つです。この方法では、二酸化炭素が浮上時に地中のミネラル分と反応し、炭酸塩となるため、地上に再び出てくることはありません。また、二酸化炭素を送り込む代わりに、メタンを取り出す技術も開発されています。

また、二酸化炭素を海水に溶かしたり、低温高圧である深海に液体の状態で保存したりする方法も考えられており、これらの方法は海洋貯留と呼ばれます。

他にも、水酸化カルシウム水溶液と反応させて、炭酸カルシウムとする方法なども考えられていますが、コストの問題や処理に多くのエネルギーを必要とし、本末転倒となってしまうことなどから、現実的ではありません。

ミドリムシは、培養するために二酸化炭素を必要とするため、ミドリムシの培養プラントは、二酸化炭素再利用プラントの一面も併せ持つことになります。そこで、排出された二酸化炭素をミドリムシ培養プラントで処理することが考えられています。

ただ、ミドリムシ培養プラントでは処理できる量に限りがあるため、大量に処理できる、地中に貯蔵する方法、海洋貯蔵をメインとして使いながら、ミドリムシを使った処理方法を併用するといった方法が現実的だと考えられています。

ミドリムシ特有の利点

農作物などを使った、他のバイオマス処理方法でも、二酸化炭素を処理することが可能です。しかし、この方法では工場などの排気を直接使用することができません。二酸化炭素濃度の高い空気を送り込めば、植物がそれだけ多くの二酸化炭素を取り込むという訳ではないためです。対して、ミドリムシなどの藻類は、培養プールへの二酸化炭素の排出量を調節することで、高効率な培養が可能となり、二酸化炭素を送り込めば、より早く成長します。

ただ、二酸化炭素を水中に送りこみ過ぎると、培養プールの水が酸性に傾いてしましまいます。こうすると、藻類が生育できる環境ではありません。しかし、ミドリムシは、他の藻類は弱い、酸性への耐性も強く、15〜16%の高濃度の中でも成長できます。これは、火力発電所の排気よりも濃度が濃く、煤塵・脱硝・脱硫の処理を行えば、使用できるということになります。

現状

2009年に、ミドリムシ事業を展開するユーグレナ社と、沖縄電力が共同で金武火力発電所にて行なった実証では、石炭火力発電所の排ガスを、ミドリムシの培養プールに送りこむ、培養実験を行いました。その結果、通常の空気を用いて行う培養よりも、増殖のスピードが早くなり、窒素酸化物、硫黄酸化物等の成分によってミドリムシを死滅させずに培養することも可能であることが分かりました。

また、2019年にはユーグレナと伊藤忠商事が、インドネシアにて、火力発電所に隣接して培養設備を設置し、火力発電所から排出される二酸化炭素や排熱を活用したミドリムシの培養実証を行うと発表し、覚書を締結しました。

各国政府の環境への取り組みが強まる中で、二酸化炭素の排出権取引などの事業も展開されていくのではないでしょうか。

ミドリムシで水質改善

ミドリムシは、水質の改善にも役立つのではないかと考えられています。

下水には、窒素やリンなどの栄養分が含まれており、海に流れ込むと富栄養化によってプランクトンの大量発生を引き起こして、赤潮ができるといった問題があります。このような問題にも、ミドリムシは、他の動物性プランクトンとともに活用できるのではと考えられています。

また、石油を採掘するとき汲み上げられる、油分を含んだし地下水、油田随伴水の浄化にもミドリムシは有用なのではないかと考えられています。

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