昆虫から新たなバイオ燃料を取り出そうとする動きが、数年前から注目を集めています。中でもそのバイオ燃料を活用し、害虫というイメージの強いゴキブリの利用によって、エコな発電、生物と機械が共存する新たな未来が提案されています。この昆虫を利用した発電方法は大阪大学大学院 工学研究科機械工学専攻の森島圭祐教授によって研究が進められていす。
昆虫の体液循環を利用したバイオ燃料電池の基本的な原理は、胴体に取り付けた装置に昆虫の体液を流し込むことで化学反応を起こして微弱な電気を発電するというものです。
具体的には、昆虫の背中に2つの穴を開けて装置を取り付け、装置内と昆虫の間で体液が循環できるようにします。それによって、生きたまま発電できるようになるのです。そもそもゴキブリに限らず、昆虫の体液にはトレハロースという糖が豊富に含まれており、これをグルコースに分解します。このグルコースが装置の内部にある電極と化学反応することで、発電する仕組みなのです。
この仕組みをスムーズに行うために、トレハロースの分解に酵素を用いたり、電極の表面積を稼ぐ工夫を凝らしたり、カーボン電極を使用したりしています。しかし、これだけでは発電量はまだまだ少ないです。なので、その効率を高めるために装置内の膜が重要になってきます。
体液には不純物やタンパク質など、不要な要素が多く混在しています。そのため、それらを分離するための膜が必要になってきます。この膜によって、発電の効率性や装置の耐久性が大きく変わってきます。この電極の構造や酵素を突き詰めれば、さらなる効率の向上も可能になるとされています。
実際にゴキブリを災害用ロボットとして活用する研究においては、ゴキブリに燃料電池を取り付けたところ、333μW(マイクロワット)の電力を得たといいます。発電力はまだ少ないですが理論上では昆虫が生きている限り発電を続けることができます。「サイボーグ昆虫」の実現に向けて、研究が続けられています。