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昆虫食のメリットとデメリット

世界では、2111種以上の昆虫が食用として消費されており、FAO(国際連合食糧農業機関)が2013年に公開した、昆虫を食料にしたり家畜の飼料にすることを推奨する報告書をきっかけに、昆虫食に対する関心は高まっています。そのような、昆虫食のメリットとデメリットを紹介します。

メリット

環境面でのメリット

昆虫は、飼育する時の環境への負荷が少ないといわれています。FAOの2013年のレポートのよると、世界全体で排出される温室効果ガスの約14%は畜産業によるものであるとされています。これは、餌の生産・輸送や糞尿の処理、反芻をする動物の場合はゲップによるメタンの排出などによるものです。メタンガスは、温室効果が二酸化炭素の約25倍あるとされています。対して、昆虫は生産時の温室効果ガスの排出が少ない傾向にあるとされています。例えば、コオロギと比べて、体重あたりの温室効果ガスの排出は、豚が約11倍、牛が約23倍とされており、豚はミルワームの10~100倍の温室効果ガスを排出すると言われています。

また、昆虫は変温動物のため、飼料変換効率が高いです。種類や製造工程にもよりますが、肉1kg太るために必要な飼料はコオロギは約1.7kg、鶏の場合は2.5kg、豚は5kg、牛は10kgとなっており、昆虫は圧倒的に少ないのです。また、昆虫は生産にかかる水の量も他の食肉と比べて少ないとされています。

昆虫は、食材や堆肥などの生活廃棄物を餌として利用することも可能です。また、可食部が全体の重量の半分ほどである牛などに比べ、昆虫は100%が可食部となっており、廃棄する箇所が少ないといった観点からも、環境への負荷が少ないと考えられています。

食品・健康面でのメリット

昆虫に含まれる栄養素は種類にもよりますが、約60~70%がたんぱく質で、他に食物繊維、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、亜鉛などを含みます。また、コオロギのタンパク質の栄養価は、牛や豚、鶏などの他の食肉とほぼ同等と言われています。昆虫類はほとんどの魚類と比べて脂肪酸を多く含むので、栄養不足の子供のための栄養補助食品としても活用できます。

社会・経済面でのメリット

昆虫を採取したり養殖飼育したりすることは、生計多様化の一作になり得ます。野生の昆虫は直接簡単に採集でき、養殖のための基本的な道具に必要な資本も最低限で済みます。そのため、昆虫を原野で採集、養殖、加工し販売することは女性や土地を所有しない貧しい人々にもできます。こうした活動は食生活を直接的に向上させ、収入源にもなり得ます。

また、昆虫は生産・加工が比較的簡単であるといえます。可食部1kgの生産に必要な農地面積は、鶏肉が45平方メートル、豚肉が50平方メートル、牛肉が200平方メートル、なのに対し、コオロギは15平方メートルと、少ない面積での生産が可能です。必要な加工も、昆虫の場合は粉末化やペースト化、素揚げなどであるため、解体などをしなければならない他の食肉と比べても簡単であるといえます。

昆虫は、世界的な食料問題を解決する手段としても注目されています。2050年には、世界の人口は約100億人になると予想されており、食糧需要も高まってくるとされていますが、農地の拡大による森林伐採や水不足の問題はすでに発生しており、地球温暖化による影響で、食糧生産の急激な拡大は難しいといわれています。そのような中で、生産・加工が簡単で、飼料や水などの資源も少なくて済む昆虫の食用利用が注目されているのです。

デメリット

食品・健康面でのデメリット

昆虫は、エビやカニなどの甲殻類と同じ無脊椎動物であるため、甲殻類アレルギーなどを持つ人々は、食べることで症状が出る可能性があります。

病気や寄生虫などのリスクを考え、虫を食べるのを避けたいと考える人もいるかもしれませんが、FAOは昆虫が他の食材のように衛生的な環境で扱われる限り、病気や寄生虫が人間に伝染された事例は知られていないと否定しており、そのような心配はあまりしなくても良いといえます。

社会・経済面でのデメリット

色々なメリットのある昆虫食ですが、昆虫も見た目やイメージから、避けられてしまうこともあります。これは、近代の衛生概念の発達とともに、蚊やハエなどの伝染病媒介する昆虫が駆除されるようになったことで、昆虫そのものへのイメージが「非衛生的」「汚い」といったものになっていったことが、背景にあると考えられています。虫に対してよくない印象を抱く人は、見た目が、昆虫そのもののままであると、こういったイメージに直結してしまうため、体の形が分からない程度まで加工されるなどした、昆虫食品から食べるといった工夫することもできます。

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