食用昆虫を普及させる取り組みを積極的に行っているのが、ヨーロッパです。2015年には、オランダで昆虫食を専門に扱う学術誌が誕生し、2018年にはEU(欧州連合)が、「EU新食品規定」を施行し、規則が最初に導入された1997年5月15日以前に、欧州でほとんど消費されたことがなかった食品や、原料を指す「Novel Food」(新規食品)として虫を規定し、食品として認めました。これによって、衛生審査を通過すれば、食料として昆虫を販売できるようになりました。虫を食べる文化のないヨーロッパで、このような動きが見られたのは、大きな話題となりました。ヨーロッパの中でも、フィンランドでは、2017年に政府が昆虫を食品として認可し、自然食品店や大手スーパーにも昆虫食品が並ぶようになりました。
2020年春には、イギリス・ガーディアン紙が、EUの欧州食品安全機関(EFSA)はまもなく、ミルワームやコオロギなどを人間が消費する安全な食品として認可するだろうと報じました。
また、ロンドンの金融グループBarclaysが公開したレポートによると、2020年で約10億ドル弱という昆虫食経済効果は、2030年までにはその8倍の約80億ドルまでに成長する可能性があるといいます。各投資会社や、Facebook社の共同創業者兼CEO(最高経営責任者)であるマーク・ザッカーバーグの妹の、アリエル・ザッカーバーグも昆虫食スタートアップに投資を行なっています。
2020年12月には、国産食用コオロギの量産化を目指すグリラスが、ベンチャーキャピタルなどによる投資の第2段階である、シリーズAにて、総額2.3億円の資金調達を実施しました。また、昆虫食レストランなどの食用昆虫事業を行う企業が続々と誕生しています。日本には、昆虫食の伝統があり、欧米各国と比べると、昆虫食文化が身近であるため、食用昆虫市場の拡大は比較的早く進むのではないでしょうか。
2020年5月には、無印良品の運営を行う良品計画が、「商い」によって環境への取り組みをいこうという中で、無印良品のフィンランド初出店をきっかけに、「コオロギせんべい」を発売し、話題となりました。
アフリカや、タイなどの中国南部を含めた東南アジア地域では、昆虫は高級食材として取引されており、肉の10倍ほどの値をつけることもあります。欧米などで市場を開拓するとともに、こうしたアフリカやタイなどの市場に食用昆虫を売り出していくことで、世界的な食用昆虫市場の拡大も期待できるのではないでしょうか。