畜産廃棄物をハエの力によってバイオマス処理し、有機肥料と昆虫性タンパク質(飼料)を製造する、というのが簡潔な事業内容です。柔らかく言うと、豚、鶏、牛、魚の食べない部分、酒粕などに弊社のハエの卵を付け環境管理をすることによって、それらを無害・無臭で栄養価の高い肥料にすることができます。また、その過程で育ったハエの幼虫を弊社の技術で肥料から抽出し、高タンパク質源として鶏・豚・魚などの餌として提供できるようになります。畜産廃棄物の処理についても現在は国や地方自治体がお金を出して焼却処分していますが、そこを弊社が担うことによって事業収益をあげられるようになっています。
肥料飼料ともに言えることとしては、「増大効果」「耐病性」が挙げられます。つまり、「野菜や魚が大きくなりやすい」「病気になりにくい」ということです。その他、利用者からはそれ以上の有益性を感じていただいております。
弊社の場合はその他の昆虫食の提供会社などとは異なり、直接的に世間様に何かを提供するわけではありませんので大きな問題にはならないのではないかと思っております。自分自身(註:ご担当者様)もハエが好きというわけではありませんし、昆虫に対する嫌悪感は自然と共に生きるべき人間としては悲しい話ですが、仕方ないという一面もあると思います。
唯一の強みとしては、研究開発にあると思っております。弊社の技術のルーツとしては旧ソ連時代のマーズ計画(火星までロケットを飛ばそうとしていた計画)にあります。その頃から研究開発が始まり、ソ連崩壊後1993年に日本の技術商社が買収。それ以降日本でも25年以上研究が進められています。その中で弊社は選別交配(いいハエと良いハエだけを選んで交配させ強い個体のみを育てていくこと)を進めているため、競合他社は到底追いつくことができないと考えています。
短期的には、なによりも大規模な処理プラントを建築することにあります。地方行政に導入して頂き、実際に特定地域内で弊社のシステムを活用した循環型社会が実現したいと考えています。長期的には他国にも進出し世界の産業廃棄物、農家、畜産業界のインフラになりたいと考えています。また、発展途上国ではビジネスとしては取引は難しくても技術提供など様々な方面で支援していきたいと考えています。
現状昆虫業界で働く人たちはその可能性を信じていると思いますが、市場拡大は誰も知りえないところだと思います。機械はもちろんのこと同じバイオテクノロジー業界の微生物とも違い、昆虫というのは明らかな意思をもって活動しており、取扱いが簡単ではありません。同じ餌、同じ温度湿度の中で生育したとしても全く発育状態が異なること、急に病死してしまうことなど多くの障害があります。可能性が無いことは決してありませんが、多くの昆虫を取り扱う企業としては人類の為に1%でも可能性があるのであれば、厳しい現実ではありますが、取り組む価値があるのではないでしょうか。
補足として説明させて頂くと、昆虫業界という不明瞭な市場を想定しているところはあまりないのではないかと思っております。弊社であれば廃棄物処理という市場、昆虫食の会社であれば食品市場に対して、どのように昆虫が食い込めるのかという視点が正しいのではないかと考えます。
株式会社ムスカは、「人類の課題」をビジネスで解決できる可能性のある数少ない企業だと考えたからです。現在のIT社会において新たにできている企業というのはどれも「人の課題」を解決しお金を稼いでいます。人が楽をしたい、これを不便だと思う、もっと安くしたい、といったところからビジネスができています。しかし、少なくとも第二次世界大戦後激しく経済発展が進みましたが、経済発展によって人はどれほど幸せになったのでしょうか。逆に言えば、中高生の皆さんの両親、祖父母というのは皆さんよりも不幸なのでしょうか。このような哲学から、「人の課題」が解決されているのに「人は幸せになっている」とはいえないのではないかと思うようになりました。それ以降、時代を逆行するようにより本質的な、最近ではSDGsなどにも代表される「人類の課題」に取り組みたいと思っています。このような思いが少しでも皆さんの世代にも届けば嬉しいと思い、対応させて頂いております。