インタビュー

実施日:2021年11月3日
対象者:アメリカ在住の男女2名(左からの吹き出し)、ドイツ在住の男性1名(右からの吹き出し)

Q1.具体的にどのようなことを見たこと、聞いたことはありますか?

私が住んでいたアメリカ西海岸の南部は地域の特性としてアジア人やメキシコ人が多く、
人種差別が少ない地域であったこともあり、直接的な人種差別を受けたことはありませんが、
言葉の問題による不利益を感じたことがあります。>
私の住むドイツのデュッセルドルフは数十年前から日本人のコミュニティがあり、 日本人に対して非常に友好的で寛容な方々が年配から若者まで多いことから日本人として直接の差別を感じることは日々ほぼ無いです。
明確な差別を受けたことは1度。見聞きするのはアメリカに住んでいると日常です。

Q2.受けたことがあるのならどのようなことですか?

運転免許の実地試験の際、教官の指示が適切に理解できず、それによるミスで一度試験に落ちました。本来、運転の技術を見る試験で、言葉の問題で不合格となった点では外国人であることの不利益を感じました。結果的には言葉の問題でしたが、根底には人種差別の要因もあったかも知れません。
コロナが発生してからしばらくの間は(中国が起源だとの報道もあったことら)、アジア人に対して冷たい視線を感じることや物理的に距離を取る人がお店や電車内でいるように見受けられました。但し、あくまで少数のケースではありました。
出張でペルーからメキシコに飛んだ時、到着地のメキシコシティ空港では中国系の不法入国の取締が強化されていました。私の搭乗した便には4名のアジア人が乗っていましたがその全員が一時拘束され、外見のみで中国人であると判断され、荷物を全て取り上げられ、内側にドアノブがない部屋に収監されて取調を受けました。日本のパスポートを見せても偽物に違いない、お前は中国人だろうと取り合ってもらえず怖い思いをしました。

Q3.差別が起きてしまう原因は何にあると思いますか?

自分の世界、コミュニティを守り、異質なものを排除したいという思い、あるいは自分の方が上の立場にあるという思い(欧米から見たアジア、健常者から見た障碍者、など)。
自分とは異なる、知らない存在を脅威に思い、自分の精神的優位を保つためにその知らない存在を自分より劣ったものであると決めつけようとする心理。
色々な原因が複雑に絡み合っているとは思いますが、1つは自分達と異質なものを認めたり、受け入れられないというダイバーシティの欠如から、もう1つは相手のせいで迷惑や損を被っているという被害者意識からの妬みや怒りが根底にあると思います。

Q4.これからどのようにしていけば良くなっていくと思いますか?

相互理解が大事だと思います。自分を正と思わず、相手を理解しようとすれば根拠のない差別は改善すると思います。 差別される側からみた場合も、相手が自分を受け入れて当たり前と思わず、相手にとって異質な自分が脅威になる可能性を理解して、受け入れられる努力(例えば相手と同じ言葉を話せるようになる、等)が必要だと思います。
一人一人がダイバーシティを身につけ、自分たちと異なる多様性を受け入れらようにする。その為の教育や訓練を行ってゆけば少しずつ良くなると思う。
物事に優劣をつけたり、区別したり、弱者でありたくないという人間の心理が根本的になくなることはないという前提にたてば、人種差別問題には規範(法規範や社会規範。「人種差別をすべきではない。それは卑しい行為である。」という基準)をもって対応し、それがやがて人々の意識に影響を与えていくのだと思います。

Q5.差別されたときどのようなことが支えになりましたか?

みんながみんな差別する訳ではない。例えばアメリカでアメリカ人に差別されたとして、親切なアメリカ人はいくらでもいることを理解すること。
冷静に取るべきアクションを考える力(上記場面では、日本の外務省に電話) と、相手と対話する能力(上記場面では英語)

Q6.どのようにその状況(差別された状況)から抜け出すことが出来ましたか

現地に溶け込む努力をすること
捲し立てる入国管理官に、私は日本人なので外務省に連絡を取り身元確認をしてから判断してくれと申し立て、戸籍を確認のうえ日本人であると認められ釈放。

Q7.あなたから見て日本の人種差別に対しての意識はどう思いますか?

低い。人種で見れば差別されることの方が多い人種だと思うが、海外経験が少ない人が多く、人種差別に遭遇する機会が少ない。逆に、差別する意識も強くないため、日本国内で外国人を差別することも少ないと思う。
日本における人種差別に対しての意識は低めだと思います。欧米諸国のように移民の受入れをしてきていない背景や、国内で大々的な人種差別問題等(アメリカの黒人やヒスパニック系差別、欧州の移民差別やユダヤ人差別)日々発生していない為、意識が低くなっていると思います。
人種の多様性が全くない国なので、人種差別そのものに馴染みがないと思いま す。一方で、根強い嫌韓や嫌中など、必ずしも人種差別ではない、隣国に対する嫌悪感のようなものは存在するので、やはり自分ではない誰かを格下に見ようとする力は働いていると感じます。

Q8.いま人種差別で困っている人達にメッセージをお願いします。

差別をする人は一部だと思います。差別をしない多くの人に目を向けましょう。差別をする人を変えるのは困難です。差別の要因(言葉、習慣、etc…)を理解し、溶け込む努力をすることも大切です。
まず自らが人種差別をしないように心がけること、そして人種差別を見かけたらそれが人種差別であることを指摘すること(状況により注意も必要ですが)を心がけています。
昨年、Black Lives Matterのデモに参加し、アメリカの黒人差別の根深さ、難しさを知りました。差別の対象となってきた人々がどのような思いでそれを受け止め、時に正面から対抗したり、時に受け流す処世術を身につけながら世代を超えて命を繋いできたのか、その思いに触れ、深く心打たれました。今自分たちが行動を取るのは、後の世代にこの苦しさを受け継がせたくない、変化を今起こさなければならない、という若い世代のパワーに心打たれました。
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