今後の展望

ここでは海洋深層水の利用の今後の展望について掲載しています。

海洋深層水利用の問題点

海洋深層水を利用する際、問題となるのが海洋深層水の汲み上げ費用や場所の不足です。海洋深層水を取水できる場所は限られているため、海洋深層水を利用しようと考えると取水場所周辺のみでしか利用できません。最近は化粧水や塩など、取水場所周辺でなくても海洋深層水を利用できる場面が増えていますが久米島モデルのように汲み上げた海洋深層水の冷たさを利用しようと思うと場所が限られてしまいます。
海洋深層水の利用場面を更に増やしていくには、化粧水や塩といった取水場所周辺でなくても利用できる商品の開発が必要かもしれません。

また、海洋深層水利用において大きな問題となるのは知名度です。海洋深層水は知名度が低く、海洋深層水を利用するメリットなどが広く知られていません。それにより、海洋深層水の利用についての研究が十分に行われておらず、まだまだビジネスチャンスが残っている界隈でもあります。
しかし、海洋深層水利用学会の高橋さんにお話を伺った際、昔と比べ海洋深層水に関する正しい情報を世間に伝えられるようになり、だんだん注目されてきたとおっしゃっていたように、今後生活で海洋深層水を見かけることが多くなるかもしれませんね。

私達が考える海洋深層水利用

私達が注目している海洋深層水の利用方法、ホタテの養殖と発酵食品への利用について説明します。

<ホタテの養殖>
1つ目はホタテの養殖です。近年、地球温暖化による海水温上昇が問題となっており、ホタテにも影響を及ぼしています。陸奥湾では、2010年の夏、60%のホタテが死んでしまいました。また、ホタテは冷水性の貝なので、水温が23度以上になると成長に影響が出ます。

そこで、私達は海洋深層水の低温性を利用してホタテの養殖を行えないかと考えました。

ホタテの養殖を行うにあたって、深層水循環システムを導入し、季節や生育段階に応じて深層水を利用することが大きなメリットになると考えられます。
深層水循環システムを導入し、定期的に水を循環させることで、ホタテを常に良質な水環境で育てます。これにより、病気の発生リスクを抑えることができます。
これは、久米島モデルの一つである牡蠣の養殖(詳しくはこちら)でも実用化されている利用方法で、アタらない牡蠣の生産に成功しているためホタテにおいても同じ ことが言えます。
また、季節や生育段階に応じて深層水の使用量を調整し、最適な環境を提供することができます。例えば、暑い夏場は海洋深層水を多く使い、水温を下げて養殖することができます。
海洋深層水の特徴の一つである富栄養性を活かしてホタテの殻の成長を促進し、養殖期間の短縮に貢献できると考えられます。。 殻がしっかりとしているホタテは高品質と評価されやすく、マーケティングにおいても有利になります。

しかし、問題点としてあげられるのは取水場所周辺のみでしかホタテの養殖を行えないことです。深層水循環システムを導入しようと思うと、かなりの量の深層水を取水する必要があります。ホタテの養殖施設を確保して、かつ深層水を大量に取水できる場所となるとかなり限られてしまいます。


<発酵食品への利用>
2つ目は発酵食品への活用することです。

発酵食品を作るうえで海洋深層水を利用すると、このような効果があると考えられます。
・ミネラルバランスが発酵を助ける
深層水には、カルシウムやマグネシウム、カリウムなどのミネラルがバランスよく含まれていおり、これらのミネラルは微生物の活動を助け、発酵を安定化させる効果があります。
・発酵風味の向上
ミネラル分が多い環境で発酵が進むことで、深みのある味わいやコクが生まれることが期待されます。特に海洋深層水を使うことで、一般的な塩水発酵よりも豊かな味わいが作られることが多いとされているそうです。
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