第3章

タイムマシンとパラドックス

双子のパラドックス
〜歳をとるのは兄、弟?〜
双子の兄弟がいて、兄がロケットに乗って遠くの星に出かけ、そして戻ってくる。
弟はずっと地球にいるとする。
運動している時計は遅れるので、兄の時計は弟にくらべ進みが遅れゆっくり歳をとる。
そして何年後かに兄は自分より歳をとった弟と会うことになる。
たとえば兄が光速度光が伝播する速さのこと 60パーセントの速さで12光年かなたの星に行って戻ってくるとすると、往復で24光年だから弟の時計では40年かかる。
これに対して兄の時計では32年しかかからないので戻ってきたときには8歳弟のほうが年上になっている。 兄の速度が光速度の80パーセントなら弟の時計で30年、兄の時計で18年となり、光速度の96パーセントなら弟の時計で25年、兄の時計で7年しかかからない。
これがパラドックス正しそうに見える前提と、妥当に見える推論から、受け入れがたい結論が得られる事を指す言葉 となのは、この状況をロケットに乗った兄の立場で見ると運動しているのは弟のいる地球なので、弟の時計の方がゆっくり進み、兄が戻ってきたとき弟は歳をとった兄に出会うことになる。
この場合は、もちろんこの結論は間違っている。
歳をとるのは弟のほうだ。
なぜなら兄と弟の運動は完全に同等ではないからである。
弟はずっと地球上にいるのにたいし、兄は星についたら方向転換して地球に戻ってくる。
運動の方向を変えるということは、兄が静止して見える慣性系が行きと帰りで違うということである。
そしてこのことが弟と兄の歳の違いの原因である。


双子のパラドックスの解法
双子のパラドックス解法1
〜慣性系を乗り越えたのはどっち?〜
具体的に弟のほうがなぜ歳をとったのか説明しよう。
そのため兄は光速度の80パーセントで12光年先の星を訪ねて戻ってくるとする。
兄が目的地に着いた時点での慣性系慣性の法則(運動の第1法則)が成立する座標系を乗り越えたのがカギである。
そこであにが目的地に着いた事象を事象Aとしてこの事象と同時の事象はどこか考えてみよう。
離れた2事象が同時かどうかは観測者による。
そこでまず地球にいる弟のの慣性系で考えると、兄は30年かけて戻ってくるから当然事象Aは弟の時計で出発してから15年目になる。
したがって弟の世界線上で出発してから(弟の時計で)15年後の事象が事象Aと同時となる。
一方、目的地に向かっている時の兄の時計で事象Aと同時の弟の世界線上の事象を計算してみる。
弟のの慣性系で事象Aの時間座標は15年、空間12光年である。
原点から事象Aに引いたベクトルを考えると、このベクトルの4次元的な固有な長さは、12の2乗−15の2乗=−81=−9の2乗となる。
固有の長さはの慣性系によらない。
そこでこのベクトルの固有の長さを兄のの慣性系で計算してみると、兄の慣性系(静止系)では空間座標は0となるから固有の長さは時間成分だけできまり、結局9年となる。
要するに兄の時計では9年で目的の星につくのである。
兄の9年は弟の9×0.6=5.4年にあたるから弟の世界線上で出発点から5.4年後の事象が事象Aと同時刻になる。
同様に考えて、地球に戻ってくる兄の時計で事象Aと同時な弟の世界線上の事象は、弟の時計で出発時から24.6年後になることがわかる。
兄が目的地の星での慣性系を乗り越えた一瞬の間に弟は19.2年の時を経過しているのである。


双子のパラドックスの解法2
〜実際の信号を受け取ってみよう〜
兄の一瞬の間に20年近くも経過するということは理解いただけただろうか。
これは特殊相対性理論の同時の概念を当てはめただけで実際に兄が弟の時計を見たらそうなるというわけではない。
実際にはどんな望遠鏡を使っても兄は弟の時計を見ることはできないが時計の代わりになるもので考えてみよう。
それには弟が兄に定期的に光信号をおくればいい。
そして兄がどのような間隔で信号を受け取るかを考えればいい。
信号の間隔が時間の進み具合だと思えばよいからである。
さて、光が目的の星につくのに12年かかるから、兄が出発してから3年後に弟が出した信号を、兄はちょうど星に着いたときに受け取る。
それ以前に出した信号は、兄が星に向かっている途中に受け取る。
したがってドップラー効果波の周波数が異なって観測される現象のこと によって兄は1日より長い周期で弟から信号を受け取る。
また、それ以後に出した信号は、兄が方向を反転してから受け取る。
すると兄は1日より短い周期で信号を受け取ることになる。
兄は反転した瞬間に弟の時計が12年も瞬時に進むのを見るだけではなく、最初の3年だけ弟の時計がゆっくり進むのをみて、後の15年は弟の時計が速く進んでいるを見るのである。
同じことを今度は兄から弟に信号を出してやってみよう。
予想がつくように今度は、弟にとって最初の27年の間、兄の時計がゆっくり進み、後の3年だけ速くすすむのを見る。
このようにお互いの時計を観測すると2人は同等でないことがよくわかる。
だから2人の間で時間のズレが生じるのである。


双子のパラドックスの解法3
〜加速度運動による説明〜
これまでの説明でも納得できないかもしれない。
それは兄が星についた瞬間に慣性系を変えるというところだろう。
具体的には兄は目的の星に近づくとブレーキをかけて速度を落とし、星で静止する。
そして方向を変えて加速し、ある速度になったら慣性飛行をする。
したがって慣性系を変えるということは加速度運動をするということである。
じつは、ここで時間の遅れが生じるのだ。
目的の星の近辺だけではなく、出発時と到着時にも加速度運動をする。
しかし、兄は地球から出発するのではなく地球を通り過ぎる瞬間に弟と同じ時刻にするように時計を調節して、ずっと一定の速度で遠くから地球に向かって運動すれば出発時の時間の遅れが生じない。
また、星から戻ってくるときも速度を落とさず地球を通り過ごしてあとからお互いの時計を比較すればよい。
いずれにしても双子のパラドックスで重要なのは星付近の加速度運動である。
また兄の時計が弟の時計より遅れるのは、加速度運動によって兄の時計が遅れるからである。
速度が大きいほど、静止するため、そしてその速度まで加速するための加速するための加速度は大きくなる。
あるいは長い間小さな加速度で運動しなければならない。
こうして速度が大きいほど時計の進みの遅れも大きくなって、地球に戻ったときに兄と弟の歳の差も大きくなる。



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