警告色としての色彩

では色彩鮮やかな鳥類は、すべてこの性淘汰によって進化してきたのでしょうか。同じ色彩の美しい鳥の例として、モリモズ類を挙げてみましょう。モリモズ類は強い毒性を持ち、捕食相手を死に至らしめます。またモリモズ類の外見はお互いに似通っています。このことから、モリモズ類間にはミュラー型擬態の関係が成り立っていると言えます。つまり、モリモズ類の鮮やかな色彩は性淘汰によるものではなく、自身が危険な生物であることを他に知らせるための警告色なのです。  クジャクの色彩は青を基調にしたものが多いのに対し、モリモズ類の色彩は赤と黒や橙の二色です。これはドクガエルやホタルなどにも共通する代表的な警告色であり、赤と黒の有毒、または不味な生物は世界中に数え切れないほどいます。これはつまり、赤と黒の生物どうしが、分類群にこだわらず、かなり広い範囲でミュラー型擬態の関係にあると言えます。しかし、モリモズのような猛毒を持つ生物を食べた鳥は死んでしまうのだから、赤と黒の模様に意味はないのかという疑問が生まれます。けれども、獲物のその二色を、一部の鳥は“本能的”に避ける傾向にあることが北米の鳥を用いた研究で明らかになっています。すなわち赤と黒と言う配色は見慣れた、見慣れないと言う問題ではなく、捕食者が嫌う本質的なものをその底に秘めているといえるのかもしれません。