憲について話すときに、最も議論されているのは憲法9条でしょう。
憲法9条にはこのようなことが書いてあります。

憲法9条

ここに書かれているポイントとしては、

・戦争は永久にやらない

・軍隊は持たない

ということです。
 事実、日本は1945年に第二次世界大戦が終わって以来、
一度も戦争に加担していませんし、国内で内戦もおこっていません。
そのため、日本は世界の平和をリードする国として高い評価を得てきました。
その歯止めとなっていたのは、国民の戦争を嫌う感情だけでなく、この憲法9条の存在もあったと考えられます。
またそれが評価されて、ノーベル平和賞にもノミネートされたこともありました。


 しかし、その憲法9条が今、大きな変化を遂げようとしています。
一体どういうことなのでしょうか。
 そこには先にも説明したとおり、集団的自衛権の行使容認の問題などがあります。
憲法解釈を変更していくだけでは、自衛隊のできることに限りが出てきて、国民を危険から守りぬくことができない、という懸念があります。


 確かに集団的自衛権の行使容認は閣議決定されていますが、憲法9条では他国との協力が十分に行えないなどの問題もあります。
世界全体が協力していかなければいけない時代に、これは他国との関係に影響が出てしまう恐れがあります。
そして、これに反対する意見が多いのもまた事実です。  
なぜならば、下手に改正をすれば戦争を容認してしまうことになり、
今まで世界をリードする平和国家であった日本は再び悲惨な状況を目の当たりにすることは間違いありません。


戦後70年も日本が戦争に介入せず、
平和国家として世界をリードしてきたのは憲法9条があったからに他なりません。
その憲法を戦争とまでは行かなくても、
安全保障の点である程度まで今までの規制を緩和するわけです(後述)から、
平和国家としての日本の地位もそれだけ下がってゆくことに繋がってしまいます。

憲法96条。憲法9条とは違い、あまり私たちの生活に深くかかわっていないように見えるこの条文。
しかし、憲法9条と同じくらい議論もされているのです。憲法96条とは、いったいどのようなものなのでしょうか。


憲法96条

 すなわち、憲法96条には

  ・ 憲法改正するかどうかを決める議論を始めるには衆議院・参議院の議員のうちの2/3以上の賛成が必要

  ・ 憲法を改正するかどうかは国民が投票によって決める。

  ・投票数のうちの過半数が賛成であれば憲法改正がされる。

  ・ 憲法改正の際は、天皇陛下が国民の名前で公布される。

 
というようなことが書いてあるのです。  
 なぜこの憲法が改正が必要であるとされているのでしょうか。  
 日本は戦後70年、主権回復からも60年以上が経っています。
その間に時代の流れが変わらなかったわけでもありません。


その間には「東西冷戦」もあり、あまり改憲について口に出すことはできませんでしたが、
比較的言論の自由になったところでなぜ改憲の必要性が訴えられなかったのでしょうか。
そこには、改憲手続きの複雑さがあったのではないでしょうか。  


 日本における改憲は、総議員の2/3以上の賛成で発議され、その後国民投票で過半数の賛成が得られれば可決、というようになっています。

構成

 しかし、これを行うことは並大抵のことではなく、とても難しいことです。
この様に、改憲が容易にしにくいように、厳重な段取りを踏まないと改憲できない憲法を、その硬い性質から「硬性憲法」と言います。
硬性憲法である上に、総議員の2/3以上という数字が、改憲を敬遠させてしまったというのが自民党の言い分です。  


 これに対し自民党は総議員の1/2以上とハードルを下げました。
これによって改憲に対する議論もより活発になるかと思われますが、ハードルを下げるということは、より自民党の思う壺にしやすいという反発も相次いでいます。


実際、この「総議員の」「2/3以上」という水準は、
他の法案などのハードルよりもはるかに高いわけではありますが、
これは日本国憲法が硬性憲法であるからです。
もし、下手にハードルを下げすぎてしまったら、硬性憲法としての日本国憲法を否定してしまうことにもなってしまいます。



 日本国憲法前文は条文ではありません。
料理にたとえて言うならば、103もの条文というメインディッシュの前に出てくる、前菜といったところでしょう。しかし、前菜とはいえ日本国憲法はこういうものだ、と言っている非常に重要なものでもあります。  


憲法9条と並び、改憲派の方々が「変更すべきだ」と主張されるこの前文。
ここに書かれていることはどのようなことか、特に自民党の作成した改憲草案と比較して大きく変更がなされた部分について、読み解いていきたいと思います。

条文        
      
ここには、
 ・日本国民は、平和がいつまでも続くことを願う。  
・自分たちの安全と命は、武力ではなく、平和を愛する諸国民の約束を守る態度を信じることによって守ろうと決意した。  

ということが書かれています。  
前文にはほかにも国民主権基本的人権の尊重など、三大原則が記されていますが、
改憲の焦点にもなっていて、改憲草案でも大きく性質の異なっている「平和主義」の部分を抜き出しました。  


この前文の何が問題視されているのでしょう。
それは、この文章の解釈に関わってきます。  
たとえば、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」という文章が、
読み方によっては「日本国民の命と安全を、他の国の善意に任せる」と受け取れるというのです。  
そう受け取るならば、
もしもこの後日本の国際関係が悪化した場合に、国民に大きな影響を及ぼしてしまう」という懸念があります。



 では、自民党はこれらを一体どのように変えていこうとしてるのでしょうか。

 
① 憲法9条について
自民党によって改められた憲法9条はこのようになりました。

9-2

全体的な印象として、現行憲法よりとても長くなりました。
 どのようなことが書いてあるか、詳しく見ていきましょう。

・確かに我が国は戦争を放棄するが、これは自衛権を妨げるものではない。

・国の平和や安全と国民を守るために、トップに内閣総理大臣を置く国防軍を設置する。

・国防軍は、国会の意見などに従わなければならない。

・国防軍は、世界と協力して、国民の命や自由を守ることができる。

・国防軍に所属する人が、仕事をする際に犯罪を犯したり、国防軍の機密を守らなかったりした場合は、国防軍の中に設置する「審判所」で裁かれる。
 ということです。


自民党は、現在の自衛隊国防軍へとポジションを変え、更にはその内容を憲法9条で定めました。
 また、現行憲法での憲法9条にあたる部分を、国の三大原則の一つである「平和主義」の名前がつけられました。


②96条について
 
96条は、自民党の作成した改憲草案の中では100条に変更されています。
では、新100条へと姿を変えた96条をさっそく見てみましょう。

9-2

ここに書いてあることとしては、前にもお話ししましたが、

 
・改憲するかどうかを話し合うためには、議員の半分以上の賛成を必要とする。

 ・最終的に改憲するかどうかは、国民が投票を行って決め、票として成り立つ票の中の半分以上が賛成すれば改憲できる

というように、現行憲法と比べて、改憲のハードルが低くなっています。  

③前文について
前文は、書いてあることのすべてが変更されました。
ただし、平和主義・国民主権・基本的人権の尊重の三大原則について記されていることには変わりありません。
ここでは、「改憲の焦点」で注目したところに相当する部分を抜き出しました。

条文

 現行憲法の前文の記述に比べてかなり短く簡潔になっています。
どのようなことが書かれているかというと、

・いろいろな国と仲良くして、世界の平和を守る手助けをする
ということです。
 現行憲法のように、他国の善意を信頼するのではなく、国を自ら守る、というように書かれています。


この章では、改憲を推進する方々の意見を取り入れて話を進めました。  
しかし、国民の全員が全員、この改憲に賛成しても、それでは改憲をするかどうかという議論にはなりません。
この改憲に対し、「
現行憲法を護ろう」という、いわゆる「護憲」という動きも大きいのです。  
次の章では、なぜ彼らが護憲の動きを見せるのかを考えていきたいと思います。

Copyright (c) 2014 Kemportant! All Rights Reserved.

  
トップへ