安全対策

  1. 基本的考え
  2. 廃棄物処理
  3. 国の政策
  4. 立地条件と耐震設備
  5. 作業員の安全性
  6. 輸送時の対策
  7. 国際協力
  8. その他

基本的考え

  1. 仕組みに組み込まれているもの
  2. 人的なもの
  3. 安全解析について

仕組みに組み込まれているもの
 原子力施設では放射性物質を外に出さずに炉内に閉じ込めておくことが重要です。このため、万一事故が発生しても周辺への影響がないようにすることを第1に考えています。
 多重防護の考え方に基づいて設計は行われています。多重防護とは事故が起こらないように、起きても周囲に影響を及ぼさないようにという考え方です。このための対策は3つあり、安全対策はすべてこれに基づいて行われています。
  1. 異常を未然に防止するための対策
  2. 異常が発生した場合に拡大を防止するための対策
  3. 施設周辺への放射性物質の異常な放出を防止する対策
 原子力発電所の安全性は安全装置の性能や作動時間で評価されていてこれを決定論的安全評価といいます。
 また、あらかじめさまざまな事故を想定していますが、その範囲を大きく超える事故である過酷事故となるのは安全装置がすべて故障した時で、その確率は原子炉1基あたり100万年に1回以下であると評価されています。この確率をさらに下げるための対策をアクシデントマネジメントといいます。日本で行われているものに炉心への注水や原子炉減圧の自動化、非常用発電機の手動起動による電源供給などがあります。
 間違った操作を受け付けないインターロックシステムがとり入れられています。
 装置が故障しても安全方向に作動するフェイルセイフシステムがとり入れられています。
 高品質、高性能の材料を使用し、余裕を持った設計になっています。
 自動監視装置が常時監視していて異常を発見するとすぐに必要な措置を起こせるようになっています。原子炉は異常を感知すると自動停止するようになっています。これらの装置はそれぞれ独立しているためどれかが故障していてもほかの設備が働くようになっています。
 軽水炉は炉の出力が上昇しても核分裂が抑制されて出力の上昇を押さえる自己制御性をもっています。これは軽水炉で核分裂が増加すると冷却材の水の沸騰が激しくなって密度が小さくなり、水は減速材でもあるため減速材としての効果も低くなり中性子は高速なままで新しい原子核と衝突しにくくなり核分裂しにくくなります。この効果を減速材のボイド効果といいます。
 燃料のなかのウラン238は核分裂しませんが温度が上昇すると中性子の吸収も増えます。核分裂が増加して燃料棒の温度が上昇すれば、ウラン238の中性子の吸収も増えるのでウラン235と衝突する中性子は減少し、核分裂は押さえられ出力も低下します。この効果を燃料のドップラー効果といいます。
 非常用炉心冷却装置(ECCS)が設置されてします。この装置は原子炉内の水が失われるという事故が起きても中に水が自動的に注入され炉心を冷やし破損を防ぎます。
 5重の壁によって放射性物質は閉じ込められています。放射性物質のほとんどはペレットによって封じ込められ閉じ込めきれない希ガスはペレットを入れてある燃料被膜管で閉じ込められます。圧力容器、格納容器、原子炉建屋によって覆われ、放射性物質の外部への放出を防いでいます。
 建物内の気圧は内部にいくにしたがって低くし、放射性物質が外に出ないようにしています。施設はコンクリートで作られ鉛板や鉄板によって外部にもれる放射線量をできるだけ低くしています。

人的なもの
 設計時の安全審査では事故を想定して放射性物質の外部への放出の抑制ができる設計であるかどうか検討されます。事故の想定では技術的に最悪の場合には起こるかもしれない重大事故、技術的には起こりえない仮想事故として、原子炉冷却材喪失(PWR・BWR)、蒸気発生器伝熱管破損、主蒸気管破断の3つの場合を想定しています。これらの事故でより条件を厳しく設定し、仮想事故では技術的に起こりえない仮定を加えて放射性物質の放出とその周辺への影響を検討されています。
 原子力施設の設置者や地方自治体はモニタリングステーションで放射線量を常時監視、土のサンプルを定期的に採取して放射性物質の監視をしています。測定された値は設置者や地方公共団体に専門家や地元関係者も加えた機関で評価されて、結果は地元住民に公表されます。
 外に放出された放射性物質がどの方向に向かうかを予測するネットワークシステムも開発・運用されています。
 運転開始後には約1年ごとに3ヶ月かけて原子炉を停止させて定期検査が行われます。機器は分解点検されるものもあり、重要な設備は国の検査があります。
 運転員は毎日の監視業務や研修センターで訓練しており、通常時の運転技術とコンピュータシミュレーションで異常時への対応技術を訓練しています。
 補修員も通常業務以外に保守点検作業のトレーニングを行っています。日常の点検は機器を使うだけでなく、目や耳で直接異常を検査しています。
もっと詳しく
安全解析について
原子力発電所は安全でなくてはいけません。発電所の設計の時の安全であるかを審査では安全解析という方法の結果を利用して判断します。
安全解析とは色々な状況の時に原子力が発電所がどのような状態になるか様々な細かい条件を設定してコンピュータなどを使って分析することです。
色々な状況とは原子力発電所の放射性物質の放出量、耐震性と強度、異常が発生した時の安全性、事故が起き放射性物質が放出した時の周辺への影響です。
安全解析を行う時には色々な条件を実際より厳しくして、最悪の場合を想定して行います。


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