化 学 基 礎  第四講


4−3 化学で錬金術は可能
 最近でもないが、化学によって否定された黄金練成が近年の研究結果で理論上可能という事が判明した。これについてこのページで紹介する。

 そもそも全ての物質は陽子・中性子・電子から出来ている。そして原子は陽子の個数で元素が決定されるので、陽子の個数を人為的に変化されられれば鉛(Pb)から金(Au)を作り出すことも可能である。

 確立されている安定した理論として放射線による原子崩壊がある。
 物質の中には、ウランやラジウムのように外から何も働きかけをしなくても、エネルギー的に不安定な原子核内部から自然に放射線を放出するものがあり、放射線にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線の3種類がある。
 例えばガンマ線を物質に当てると、その物質の中性子が一個はじき出されて原子番号が一個下の別原子になる事が証明されている。

 そのため原子番号79の金(Au)の一個上、つまり原子番号80の水銀(Hg)にガンマ線を当てると金になる。また、この理論を繰り返せば原子番号82の鉛から金を作り出すことも不可能ではない。

 だが、この手法を実行するには数百億円もの金とかなりの年月が必要となるので、そこそこの質量の金を得ようとすると絶対に得た金以上の損失が出てしまうが。
 北海道大学工学部に在籍していた松本高明助教授らの研究グループでは、過去にこのような発見をした。シミュレーションによれば、半径50センチ、厚さ12センチ、重さ1.34トンも水銀に、50メガ電子ボルトのガンマ線を70日間照射した後、六年間の冷却期間をおくと、およそ74キロの金ができる。さらに副産物として180キロの白金も手に入る。
 もっとも、この実験を行うには電気代だけで150億円(1キロワット10円換算)もかかり、グラム当たり20万円と、相場に比べても非常に高額となってしまい元がとれない。

 また、1919年、ラザフォードという化学者は窒素原子にアルファ線をぶつける実験をするうちに、窒素原子が酸素原子に変換されているものがあることを発見した。
  つまり, 窒素の元素を酸素の元素に「人工的に」変換したことになる。

 結論として、現在では、アルファ線・ベータ線・陽子・中性子などを原子核に当てて人工的な核変換を行うことによって、ほとんどの元素をうることができるようになっている。ただし、その費用は馬鹿にならないため実用的な技術ではない。

<前ページ  トップへ  次ページ>