かぐや

「夜空の月を見上げることはあるかの?」
「空を見上げれば一番最初に見えてくる天体ですからね」
「うむ、地球から最も近い天体、それが月じゃな。
しかし最も身近だというのにまだまだわかっていることが少ないのじゃ」
「えっ、そうだったんですか」
「そんな月の観測をするため打ち上げられた日本の月探査機 それが『かぐや』じゃ」
月探査機かぐや
(c)JAXA


SELENE計画

「かぐやは日本初の大型月探査機として2007年9月14日に打ち上げられた。
この計画名を
SELENE(セレーネ:SELenological and ENgineering Explorer)』
という。もちろん探査機名は……」
かぐや姫!
「その通り、竹取物語に因んでおる」
「目的は何ですか?」
月の起源と進化を探ること、そして将来の月の利用に向けた
様々な観測
じゃ。
月表面の元素や鉱物の組成、地形、地下構造、磁気異常などを観測した」
「月の利用?」
「月には、地球では希少な鉱物や地下資源が豊富にあるとも考えられておる。
また将来人類が月に移住する計画もあちこちで考えられておる。
実際にそういうことが可能なのかどうか、を調査したのじゃ」
「なるほど」


高性能な観測機器たち

「実はこのSELENE計画、アポロ計画以来世界最大規模の月探査計画じゃ
「アポロ以来!?」
「世界の関心はそこまで月に向いていなかったようじゃの。
それだけ注目が集まる計画とだけあって、相当高性能な観測機器が搭載された」
「どんなものがあったんですか?」
「まずは元素分析として、ガンマ線分光計。
地形表層構造を調べるための地形カメラ。
これは立体視、つまり3D画像の原理を応用しておる。
そのほかにも月環境の調査のため、粒子線観測装置。
これはヘリウムイオンや電子などの分布を観測する。
これによって月環境と太陽活動の関連性を調べるのじゃ。
まだまだたくさんの観測機器が載せられていたぞ」
「私には深くわかりませんが、凄そうです!」
「そして忘れてはならないのが……」
「ん?まだあるんですか!?」
NHKとJAXAが共同開発した宇宙探査用ハイビジョンカメラじゃ。
理論的には地球の120倍の重力にも耐えられる計算じゃ」
「か、かめら!それでいったい何を撮ったんです?」
「月の水平線から地球が昇ってくる様子、いわゆる『地球の出』を捉えた」
地球の出
「この映像はNHKの特集番組でも放送されたから、覚えてる人も多いかもしれんの」
「私この写真見たことがあります!」
「そうじゃろうな。
そしてこのハイビジョンカメラは月表面の様子を
鮮明に捉えて地球に届けてくれた。
たとえば、次に紹介するのは月の南半球の地表じゃ」
月の南半球の表面
「すごく高解像度ですね。表面の様子がくっきりわかります」
「このハイビジョン画像をもとにわかったこともたくさんあるんじゃよ」

観測の成果、そしてこれから

「わかったことっていうのは?」
「たとえば月の南極、ここには氷があるのではないかと長年考えられて
しかしこれらの画像を解析することで氷は無いことが判明した」
「ありゃりゃ、それは残念です」
「確かに残念じゃの。しかしもちろんこれだけではない。
まずアポロ15号着陸機の噴射跡が実際にあることを確認した
時々『アポロ計画は実際に月には行ってない!』と言われるが
それに対する確固たる証拠が提示されたことになったの」
「今でも残ってるんですね」
「月は地球に比べて大気が薄いからの。
加えて雨などで削られることも無かったからの。
ほかにも成果はあった。もっとも代表的なものとしては
月の表側「嵐の大洋」の西部にあるマリウス丘という場所に、直径65m
深さ80〜90mの縦穴があることを発見したんじゃ」
「直径65m……私の何倍だろう、すごく大きい穴ですね」
「この穴に差し込む太陽光、そして影の位置を分析した結果
縦穴の下には横幅370m、高さ20〜30mのトンネルがあるらしいことがわかったんじゃ!」
「うひゃー!ますます大きいですね!」
「しかもじゃ!このトンネルは長さ数十kmに及ぶ溶岩洞窟の可能性がある。
将来的には人類の月基地として利用できるかもしれんぞ!」
「ここまで来るとスケールが大きすぎます!」


「このSELENE計画は『かぐや』で終わりですか?」
「まだまだ終わらんぞ。SELENE-2が現在計画中じゃ。
次の計画では月面に探査機を直接降下し、無人探査機を走行させる!
2010年代の中ごろまでの実現を目指しておる」
「結構近い間に、また月からの生中継が見られるんですかね?」
「それが実現するかもしれんの。
このSELENE-2が実現すれば、さらに月の謎が解明されることは間違いないじゃろう」
「近いうちに実現すればいいですね。期待して待ってます!」

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