日本の宇宙開発の深い理解を目指す
きく8号
「宇宙開発だけが人工衛星の目的ではない。 現在地球に住む人々に実用的に働く衛星がいくつも存在する」 |
「そんな衛星ってあるんですね。私の中では衛星はやっぱり 宇宙探査だけが目的のような感じがします。」 |
「宙子もそのように思っているのじゃな。 今から紹介する人工衛星は、宙子もお世話になっている身近な技術のための衛星じゃ」 |
「うー……?私もお世話になっている……?」 |
「名前は『きく8号』、聞いたことはあるかの?」 |
情報化時代のために
「まずは『きく8号』のCG画像を見るのじゃ」 |
(c)JAXA
「おぉ……すごく特徴的なデザインです」 |
「宙子が驚いているのは、おそらく2つの巨大なアンテナのことじゃな? この2つの展開アンテナはそれぞれ受信用、送信用に用途が分かれておる」 |
「アンテナということは、通信衛星ですか?」 |
「察しがいいのう。その通り、きく8号は正式名称『技術試験衛星8型』 と言い携帯電話のような携帯情報端末と衛星との直接通信を可能に するため、2006年に打ち上げられたのじゃ」 |
「携帯電話!私、毎日使ってますよ」 |
「そうじゃろう。つまり現代人にとってはなくてはならない衛星じゃ。 ところが携帯電話での通信には、地上に基地局というアンテナを 設置する必要があるじゃろ。 このシステムのせいで山間部や海上では携帯電話は利用不能となる 災害発生時にもスムーズな通信は困難じゃ」 |
「確かに山の中とかは圏外ですね」 |
「この衛星は、より安定した通信サービスを提供するんじゃ。 先ほど紹介した巨大なアンテナ、一枚でなんとテニスコート一面分の 大きさじゃ。この巨大なアンテナを利用することで、携帯電話のような 小さな端末でも静止衛星と安定して通信することが可能となったのじゃ」 |
「お、携帯でネット検索してみたら、アンテナの実物画像が出てきましたよ」 |
(c)JAXA
「打ち上げ時にはこれが折りたたまれていたのじゃ。 しかし、さすが現代の中学生……インターネットを使いこなしておるわい」 |
「情報化社会ですからね」 |
東日本大震災でも大活躍
「きく8号は既に使われているんですか?」 |
「もちろん。 2011年3月11日に発生し、東北地方などに甚大な被害をもたらした 東北地方太平洋沖地震の際も、大活躍しておる。 災害対策支援として、岩手県大船渡市市役所、大槌町中央公民館の 二か所に地上アンテナや通信端末を設置した。 これときく8号を組み合わせることで、被災自治体の人々も インターネットに接続し、情報を得ることが可能になったのじゃ」 |
「それはすごいですね。災害支援も宇宙から行われる時代なんですね」 |
「そうじゃ。宇宙の時代は近づいておる、とわしが何度も言う意味が わかったじゃろう?」 |
「私が今持っている携帯にも宇宙がつながっているんだー……」 |
「カーナビなどに代表される、位置情報サービス技術にも このきく8号は大きく関わっておるぞ。 それでは最後にこの衛星のキャッチフレーズを紹介しよう」 |
大きなアンテナがひらく未来の扉、届ける安心
――大型衛星を使った新しい携帯通信の世界へ――
「やっぱりアンテナなんですね」 |
「この大きなアンテナが、遠く離れた宇宙空間から私たちの暮らしを 支えているのじゃなあ」 |