日本の宇宙開発の深い理解を目指す
【シナリオ通りのカプセル帰還】
「こんにちは!私は宇宙開発にすごく興味を持っている女子中学生、宙子です。
今日は、『はやぶさ』プロジェクトについていろいろと質問させていただきます。 それではまず最初の質問です。 「はやぶさ」の大気圏突入から帰還までの難しさは何でしたか?」 |
「大気圏再突入時の『熱』が大きな壁でした。 その熱からカプセルを守るための、耐熱材料の開発と再突入カプセルのシステムの構築は技術的に大きな課題となりました。 この再突入カプセルは秒速12kmで大気圏に突入し、大気との摩擦により表面温度が最高で摂氏3000度にも達します。これほどの熱からカプセルを守るため、カプセルの外側には厚さ3cmのヒートシールドが用いられました。このヒートシールドの主な素材は、航空機の構造材やスポーツ用品(ゴルフクラブのシャフト、釣竿等)などに使われる『CFRP(炭素繊維強化プラスチック)』です」 |
「熱を防いで、確実にサンプルを持ち帰るために最新の技術が使われているわけですね」 |
「カプセルは大気圏に突入後、高度5kmでヒートシールドが分離され、パラシュートが開くと、ビーコン信号が発信されるという発信される仕組みです。その際、カプセルの重心や角度、パラシュートが開くタイミングなどが非常に重要です。 実は、帰還の時に、ある不安がありました。このパラシュートを開くために使う火薬が劣化していないかということです。『はやぶさ』は度重なるトラブルによる計画の遅れで、予定よりも3年間長く極真空、極低温の宇宙空間にいたわけですから。ビーコン信号を受信したことで、幸いにもパラシュートが開いたと分かり、本当に嬉しかったです。しかも、カプセルは私達の予測した範囲内の中心に落下し、すぐに回収できました」 |
「熱という大きな壁、技術的課題がありながらも、それを乗り越えて完璧にサンプルリターンを成し遂げた『はやぶさ』。
まさにシナリオ通りだった、ということですね」 |