【カプセルに微粒子を発見】

「続いては、サンプルリターン成功後についての質問です。
『はやぶさ』のカプセルに対面したときのお気持ちはいかがでしたか?

「カプセル内部には焼け焦げたような跡もなく、予想外に綺麗すぎるというのが率直な印象です。
一方、ヒートシールドの方は、ボロボロになっているわけではなく、表面全体が均等に焼け焦げているという感じでした。 また、背面には、貼り付けていたテープがだいぶ残っていて、『こんなにも残るのか』と驚きました。 このテープは、残るまいと思っていたものです。分離後のカプセルがどれだけの高温になるかを解析できる材料として期待はしていましたが。
さらに『へその緒』が残っていることにも大変感動しました。『へその緒』とは、英語で『アンビリカルケーブル(Umbilical Cable)』と言われるものの通称で、カプセルと探査機本体をつないでいたケーブルです。カプセルが『はやぶさ』から切り離される際、このケーブルは切断され、その後の大気圏突入による高熱で跡形もなく融けてしまうだろうと思っていました。ところが、へその緒はきれいに残っていたのです。これを見た時には、信じられない気持ちと、はやぶさの形見を見た思いでいっぱいでした」

「私も、ニュースで『はやぶさ』帰還を知った時はすごく嬉しかったです。
『はやぶさ』は大気圏に突入して燃え尽きてしまったと聞いてさびしい思いがありましたが、まさかそのような形で 『はやぶさ』の姿が残っていたんですね。初めて知りました。 帰還したカプセルの分析はどこまで進んでいますか?

「本来の『はやぶさ』のサンプル採取方法は、小惑星イトカワに金属の弾丸を撃ちこみ、その衝撃で跳ね上がったものを採取するというものです。 しかし、実際には弾丸を撃てなかったため、イトカワ着陸時の砂ぼこりなどを採取できた可能性に期待していたのですが、エックス線CTなどの分析では1mm以上の大きい物質は入っていないということでした。
さらなる光学顕微鏡の分析では、10マイクロメートル(1マイクロメートルは0.001mm)程度の微粒子が1500粒発見されました。 その後、微粒子がイトカワの物質と確認され、月以外の天体に着陸してサンプルを持ち帰った世界初の例になりました」

「着々と研究は進んでいるようで安心いたしました。
太陽系の起源のなぞに迫る『はやぶさ』がもたらしたものが、どんな事実を私たちに教えてくれるのか。 今後に期待ですね!」
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