カリウムの同位体は自然界に存在するものは3種類あります。カリウム39 (93.3%)、カリウム40 (0.0117%)、カリウム41 (6.7%)の3種類です。その中の1つ、カリウム40は放射性同位体です。放射性同位体とは、不安定な原子が放射線を放出して放射性壊変を起こす元素のことです。放射性同位体にはそれぞれ違った半減期、つまり放射性同位体が放射性壊変によってその内の半分が別の原子に変化するまでにかかる時間があります。カリウム40の半減期は約13億年です。さらに、カリウムはあらゆる物質に多い、少ないの差はあっても含まれているので食品に含まれるカリウム40によって人間の体は常に内部被曝(詳しくは1杯目へ)を受けているわけです。
下の棒グラフは私たちのクラスメート35人とその保護者の方々、学校の先生方29人に取ったアンケートの結果です。高校生と大人の考えがどのように変わるのかを見るためのものです。
アンケートの内容は
カレーライスに使われる以下の食品で放射線を出すものはどれでしょう?(複数回答可)
①白米 ②カレールウ ③豚肉 ④人参 ⑤玉ねぎ ⑥ジャガイモ
というものです。

このアンケートでは、どの食品が多く回答されるか、ということよりもすべての選択肢を回答している人がどれだけいるかということを調べようとしました。結果、すべての選択肢を選んでいる人はほとんどいませんでした。また、じゃがいもを回答する人が多いのは、この質問と同時にじゃがいもへの食品照射(詳しくは3杯目「食品に放射線を当てるってどういうこと?」へ)についてもアンケートをとったので、「じゃがいもは特別に放射線を出すのではないか?」と感じた人が多かったのではないかと考察しました。
実際にはどんな食品にもカリウム40は含まれています。半減期が13億年ということからわかるように人間はカリウム40を摂取しながら進化してきました。よって、カリウム40の摂取量を気にする必要はありません。
検出器で測定する前に試料として用いる食材を測定用の容器に隙間なく詰める作業がありました。そこで、私たちはそれぞれの食品で隙間なく詰めるための工夫をしました。
【カレーライス】
《じゃがいも》
北海道産。品種は「メークイン」。柔らかくなるまで電子レンジで加熱し、潰して容器に詰めました。カレーを作るときは皮を剥いて使うので、皮がついたままのものと皮をむいたものを準備しました。
《にんじん》
北海道産。じゃがいもと同じく、柔らかくなるまで電子レンジで加熱し、潰して容器に詰めました。こちらも皮がついたままのものと皮をむいたものを準備しました。
《玉ねぎ》
北海道産。細かく切って、柔らかくするために油なしで炒め、容器に詰めました。
《カレールウ》
「とろけるカレー」を使いました。電子レンジで加熱して少し溶かし、容器に詰めました。
《白米》
福島県産コシヒカリ。特に手を加えずそのまま容器に詰めました。
《豚肉》
加熱をせずに容器に隙間なく詰めました。
【こんなのもやってみた!】
《ポテトチップス》
みんなが大好きなポテトチップスを測定!なるべく小さく砕き、容器に詰めました。種類によってカリウム含有量が変わると思い、うすしお味とコンソメ味を測定しました。
《フィットチーネグミ》
フィットチーネグミも人気のお菓子だったため、測定をしました。特に手を加えずそのまま容器に詰めました。
《鶏肉》
製作者がポークカレー派とチキンカレー派に別れたため、鶏肉の測定もしました。豚肉と同じく、加熱をせずに容器に詰めました。
《海藻》
海藻類は放射能が大きいと聞き、乾燥わかめと乾燥めひじきを容器にそのまま詰めました。
私たちが自然放射性物質の放射能の測定で使わせていただいたのはこちらのゲルマニウム半導体検出器です。
放射能を測定する検出器の代表的なものとしてNaIシンチレーション検出器やGe半導体検出器などがあります。これらの検出器を使って測定すると、試料にどのような放射性物質が含まれているのか、その量はどれくらいかがわかります。Ge半導体検出器はNaIシンチレーション検出器よりも精密に測定することができます。
測定すると次のようなスペクトルが得られます。
ピークの面積を計算することによって放射性物質の量を計算することができます。

しかし、測定試料以外からのγ線(これをバックグラウンドといいます。)もカウントしてしまうので、写真のように遮蔽のための分厚い鉛で覆われています。
Ge半導体検出器はたいへん高価な測定器であるため、試料の測定をできるのは大学の研究施設などに限られてしまいます。私たちは、東京都市大学原子力研究所にご協力をしていただき、カレーライスの材料に使われている食品に含まれているカリウム40という自然放射性物質の量を測定させていただきました。
食材を詰めた専用の容器を測定器に入れ、1時間待ちます。パソコンを使って計測値を出力しました。今回は、測定時間が短かったために正確な放射性物質の量を計算することができませんでした。しかし、カリウム40から発生しているγ線のカウント数を測定しました。カウント数と放射性物質の量は比例関係にあります。つまり、カウント数が多いほど放射性物質の量が多くなることが推測されます。


