<2014.10.27.チーム170236制作>

やまんば 【山姥】

別 名 山女郎、山うば
出没地 十津川村、下市町
容 姿 ○熊野八鬼尾谷(八木尾谷)ネジ滝のヤマジョウロは、乳房を長く垂れ、黒髪は長く、肌は真っ白だったとされているが、ヤマンバだったとも伝えられる。その洞窟の近くにタニシの殻がおびただしく落ちており生くさかったらしい。(※1)
○髪を振り乱し、目はつり上がり、口は真っ赤に耳まで避け、とがった白い歯をむいてこっちを睨みつける。(※2)。
○山うばの口は耳まで裂け、身長は3メートル以上もあった。その声はとてつもなく大きく、あたりの木がふるえるどころか山々までが震えるぐらいだった。(※3)
○尾鷲の魚屋のいそべさんととめじいという人が、大台を越える峠でやまんばに出会った。枯れ木のようで髪の毛が長く、目だけがギョロギョロ光っていたそうだ。茶色い体でシャレ木のような姿やったらしい。裸やけど男か女かはっきりわからなかったらしい。こわかったんで「どうぞこれを召し上がって下さい」と魚をさし上げてこらえてもらった。(※5)
出没方法  なまあたたかい風を感じ、ふっとものの気配を感じて正面を見ると、真っ暗な闇の中にた女が一人立っていた。(※2)
事 例  広瀬谷(下市町)の冷水の地蔵が祀られている所は、大変寂しく、昔から山姥が出るといって恐れられている。昔、村に鶏丸という名刀があり、山姥が出るとその名刀はコケッコッコーと鳴いた。すると山姥は夜が明けたと思い、どこかへ去ってしまった。したがって、山奥に行って山姥に遭うと、コケッコッコーと鳴けばよいと言われている。(※4)
アクセス
下市町広瀬谷 (外部のページへ)
原風景
ウマノケタケ(ホウライタケ科)
このキノコの仲間の黒く細長い菌糸束は、女性の髪の毛を連想させることから、「山姥の髪の毛」と見間違われ、妖怪騒ぎに拍車をかけたと言われています。
<2014.9.16.チーム170236撮影>
考 察 【性格・生まれてきた背景】
 山姥も全国的にみられる妖怪で、奈良の山姥も、その風貌にはあまり変わりがありません。また、人を襲って危害を与えるというより、その姿に驚き逃げうせたというケースが多く、山姥にあまり罪はないようです。
【実体・モデル】
 男の人がやっとたどり着いたような山深いところで、もし、高齢の腰の曲がった女性に出会ったとしたら、びっくりするでしょう。しかし、その男性には想定外であっても、その女性は山歩きに慣れいつもの生活範囲かもしれません。驚いた話を人にする場合には、多少尾ひれがつき、「目は吊り上がり口は真っ赤に耳まで裂け尖った歯を向いて睨みつけた」というふうにふくれあがったことでしょう。
【現代人との係わり・存在感】
 『古事記』のなかで、黄泉国のイザナミの姿を見てしまったイザナギを、約束を破ったとしてイザナミが追いかける話があります。また、道成寺(和歌山県)に伝わる『安珍・清姫伝説』や『謡曲道成寺』、歌舞伎『京鹿子娘道成寺』では、やはり約束を破った安珍を清姫が執拗に追いかけるという場面があるようです。いずれも、追いかける女性の姿は、「目は吊り上がり口は真っ赤に耳まで裂け尖った歯を向いて睨みつけた」まさに鬼の形相に変化していくそうです。山姥の原型でしょうか。
参考文献 ※1)奈良県教育委員会事務局文化財課『十津川村史』(S36.5.20.十津川村役場)
※2)十津川村教育委員会編『十津川郷の昔話』(S60.5.20.第一法規出版)
※3)奈良の伝説研究会編『奈良の伝説』(S55.9.25.日本標準)
※4)下市町史編纂委員会『下市町史』(S33.8.8.下市町教育委員会)
※5)広報「かわかみ」編集委員会『川上村昔ばなし』(2007.3.吉野郡川上村)