汚染がもたらした不妊症
「北海の汚染が大量死の原因ではないか?」
と、考える研究者は少なくない。北海の汚染がアザラシにどんな影響を与えているのか…。アザラシの大量死が起きる前から、北海沿岸の研究者の間では具体的な実験が進められていた。この実験を進めていたのは、海洋哺乳類研究部門の責任者であるピーター・ラインダース博士だ。博士もまた他の研究者と同じく、北海の汚染について問題提起を続けている。
博士が特に注目しているのは、オランダ沿岸に生息するアザラシの間で繁殖率が年々低下している点だという。
北海の汚染がこの現象と関わっていることは、ほとんどわかっていた。スウェーデンで、特に汚染に弱いとされているミンクに
PCB(ポリ塩化ビフェニール)を投与すると、高い確率で不妊症が発生することがすでに報告されていたからだ。そこで博士は、汚染の少ない大西洋に生息するゼニガタアザラシを捕獲し、飼育実験をはじめた。実験は、まず捕獲したアザラシを12頭づつ2つのグループに分け、一方のグループには汚染の少ない大西洋の魚を与え、別のグループには北海でとれた魚ををあたえ2年間飼育するというものだった。
この2年間に及ぶ飼育実験の結果、恐ろしいことが明らかになった。大西洋の魚を与え飼育したグループでは10頭の子供が生まれたのに対し、北海の魚を与えたほうにはたったの4頭しか生まれなかったのだ。しかも北海の魚を与えたグループの子供は体重も少なかったという。この結果より北海の汚染はアザラシの繁殖能力を低下させることを明確にした。
この実験の結果より北海の汚染がアザラシに不妊症を起こしていることは明らかで、しかもその汚染の中心はPCBである。だがこの不妊症はアザラシだけではないということが一番の問題だと思う。このPCBは人間に対しても不妊症を引き起こすからだ。このPCBはすでに代用品ができており、PCBの使用を止めることができる。だが、世界のどこかでPCBを使っている国が残っていてはこの問題は解決しない。PCBは風に乗り、世界中に影響を及ぼすからだ。