まるで都合よく話しを進める小説みたいに、喜んだとたんに、そのチャンスが訪れる。
「飯を炊くなとは、言うておらぬ!寒いからと、やたら炭や薪で暖をとるから、このように
燃料代がかかるのじゃ。」
信長が、台所奉行の佐久間右衛門を叱りつける声がしている。
「この冬を越すだけで、織田家の身代を皆灰にしてしまうつもりか。」
草履を携えて土間に控えていた藤吉郎、
「殿。」
杉戸越しに呼びかける。
「なんじゃ猿っ。」
「冬はどうしても炭や薪の使用が多くなりまするが、商人から買わないようにすれば、
金はかかりませぬ。」
「たわけめっ。買わずにどうやって、炭や薪を手に入れるぞ?」
「この藤吉郎なら、一文の金も使わず、清洲城の燃料代を賄ってごらんにいれまする。」
がらりと戸が開いて、藤吉郎の前に立ちはだかった信長、
「よし、やってみせろ。今ぬかしたことがホラなら、手打ちだぞ。」
「はい。では首尾よくいきましたら、手打ちそばでもいただきましょう。」
(さて、どうやって炭や薪を集めようか・・・)

![]() | 農家をまわって炭や薪をもらう。 |
![]() | 商人の倉庫から盗み出す。 |