藤吉郎はいって、半兵衛の言葉を待たず、さらにたたみかける。
「美濃はこのまま放っておいても、必ず信長に取られる。
取られるときには死なずともよい人間が大勢死ぬことになる。な、そうであろうが。」
問いかけていながら、半兵衛が口を開くすきもあたえず、
「そこで半兵衛どのが、竜興よりも信長が公に見方すると公言すれば、重だった美濃の武将はみな竜興を見捨てる。
これであたら命を犠牲にすることもなく、美濃は信長公の治めるところとなる。
領民も安心して、今までどおり暮らしてゆけるというものじゃ。」
半兵衛は思案ぶかげにまゆねをよせ、藤吉郎の熱弁に耳を傾けている。
「信長では器量が足りぬというなら、足りぬ所は、わしらが補ってやればよいではないか。ぜひとも信長公に力を貸してもらいたい。」
「・・・・・・さすれば信長公は、私を何万石で召し抱えようというのか。」
と半兵衛の意思が、こちらに傾いた。
「しめた!」
と、これは心の中でいって、
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