アルビレオのかんそくじょ[アルビレオの観測所] 【場所】 ジョバン二の切符
黒い大きな建物。白鳥区の終わりの天の川のまんなかに立つ四棟の建物。
一つの平屋根の上では、眼もさめるような、青宝玉と黄玉の大きな二つのすきとおった球が、
輪になってしずかにくるくるとまわっている。水の速さをはかる器械。
アルビレオとは白鳥座を構成する星の一つ。有名な二重星。望遠鏡で見ると金色で三等星のアルビレオのすぐそばに、青色の五等星がくっついている姿がみてとれる。トパーズとサファイアのようなところから、この一対を天上の宝石と呼ぶこともある。
吉田源治郎の『肉眼に見える星の研究』(1922)の中によく似た部分があり、両星を「トパーヅのやうな黄色」「サフワイアのやうな碧色」と表現している。(参考:宮澤賢治語彙辞典30p)
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いえ[家] 【場所】 家
ある裏町にある小さな家。ジョバンニ・お母さん・お姉さんが住む。現在お父さんは不在である。三つ並んだ入り口の一番左側には空き箱に紫色のケールやアスパラガスが植えてある。小さな窓が二つある。
(ケール ・ アスパラガス)
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かいさつぐち[改札口] 【場所】 北十字とプリオシン海岸
白鳥の停車場の改札口。明るい紫がかった電燈が一つついている。
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かっぱんじょ[活版所] 【場所】 活版所
ジョバンニの午后の仕事場。だぶだぶの白いシャツを着た人、青い胸あてをした人などがいる。小さなピンセットを使い、粟粒くらいの活字を拾う仕事をしている。そのため、ジョバンニは虫めがね君と呼ばれている。仕事を終えると、ちいさな銀貨を一枚もらうことができる。パン屋にてパンの塊と角砂糖を一袋購入する。
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ぎゅうにゅうや[牛乳屋] 【場所】 ケンタウル祭の夜 ジョバンニの切符
牛乳を売っている。お店というよりは牧場である。牛舎などが近くにある。年老った女の人や白い太いズボンをはいた男の人がいる。
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きょうしつ[教室] 【場所】 午后の授業
午后の授業ではジョバンニたちは理科の授業を受けた。銀河についての話を聞く。ジョバンニはカムパネルラと一緒に見た銀河の雑誌を思い出す。
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ぎんがすてーしょん[銀河ステーション] 【場所】 銀河ステーション
ジョバンニは銀河ステーションという声を聞き、気付くと銀河鉄道の中にいた。ここを過ぎたところでカムパネルラに会う。カムパネルラは銀河ステーションで黒曜石でできている地図をもらう。
(黒曜石 ・ 地図)
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くろいおか[黒い丘] 【場所】 ケンタウルス祭の夜 ジョバンニの切符
牧場のうしろにある丘。
ぴかぴか青光りを出す小さな虫がいたり、つりがね草かのぎくかの花が咲いている。
ジョバンニが空を見上げ、銀河鉄道の世界へと旅立った場所。ジョバンニがついた時には北の大熊座が、ジョバンニが去るときには蠍座の赤い星が夜空にうつくしくきらめいていた。
(蝎の火(アンタレス) ・ つりがね草 ・ のぎく)
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けんたうるのむら[ケンタウルの村] 【場所】 ジョバン二の切符
クリスマストリイのようにまっ青な唐檜かもみの木がたっている。にぎやかなさまざまの楽の音や草花の匂のようなもの口笛や人々のざわざわ云う声等が聞こえる。
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コロラド高原 【賢治の思い出】【場所】 ジョバンニの切符
荒れている高原。ジョバンニが、そうそうここはコロラドの高原じゃなかったろうかという場面がある。ここでインデアンに遭遇する。
関連詩[冬と銀河ステーション]で北上山地を走る岩手軽便鉄道を「冬の銀河軽便鉄道」とし、ビクターオーケストラの指揮者ヨセフ・パスターナックの名も登場することから、この高原は北上山地をモデルとしたことになる。賢治は猿ヶ石川に沿って走る岩手軽便鉄道を、しばしばアメリカ合衆国の高原列車に擬して、西洋音楽と結びつけて描いたのである。(参考:宮澤賢治語彙辞典271p)
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さぎのていしゃば[鷲の停車場] 【場所】 ジョバン二の切符
青じろい時計がかかっている。時計はかっきり第二時を示し、その振子は風もなくなり汽車もうごかずしずかなしずかな野原のなかにカチッカチッと正しく時を刻んでいた。その振子の音のたえまを遠くの遠くの野原のはてから、新世界交響楽のかすかな旋律が糸のように流れて来きていた。
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とけいや[時計屋] 【場所】 ケンタウル祭の夜
ジョバンニが牛乳屋へ行く道の途中に覗いたお店。店には明るくネオン燈がついて、一秒ごとに石でこさえたふくろうの赤い眼が、くるっくるっとうごいたり、いろいろな宝石が海のような色をした厚い硝子の盤に載って星のようにゆっくり循ったり、向う側から、銅の人馬がゆっくりこっちへまわって来たりする。まん中に円い黒い星座早見が青いアスパラガスの葉で飾ってある。
黄色に光る小さな望遠鏡などがあり、壁には空じゅうの星座を不思議な獣や蛇や魚や瓶の形に書いた大きな図がかかっている。
(アスパラガス ・ 星座早見)
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はくちょうのていしゃば[白鳥の停車場]【場所】銀河ステーション 北十字とプリオシン海岸
銀河ステーションの次の停車場。おりると、プリオシン海岸へ行くことができる。
十一時につき、二十分間停車する。
改札口には明るい紫がかった電燈が一つついている。
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パン屋 【場所】 活版所
活版所でもらった銀貨で、パンの塊と角砂糖一袋を購入したお店。ジョバンニは元気よく口笛を吹きながらパン屋により、パンと角砂糖を買うと一目散に家に向かって走り出した。
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ひょうほんしつ[標本室] 【場所】 家
ジョバンニのお父さんが寄贈した蟹の甲らやとなかいの角がおいてある。寄贈品は6年生が授業で使うこともある。
(蟹の甲ら ・ となかいの角)
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プリオシンかいがん[プリオシン海岸] 【賢治の思い出】【場所】 北十字とプリオシン海岸
白い岩でできた銀河の岸。瀬戸物のつるつるした標札がたっている。
百二十万年前、第三紀のころは海岸であった。
地層の年代を証明するため、白い岩から採掘が行われている。
プリオシンとは地質年代の一つ、第三紀の鮮新世(約1200万年前〜200万年前)。賢治はイギリス海岸(鮮新世の凝灰岩質泥岩の露出)について同名の童話の中で「その根株のまはりから、ある時私たちは40近くの半分炭化したくるみの実を拾ひました。」と説明している。このイギリス海岸のくるみの化石出土のイメージと、天の川=水の流れが結びついて、天の川上のプリオシン海岸が成立したのである。(参考:宮澤賢治語彙辞典617p)
(くるみ)
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みなみじゅうじ[南十字] 【賢治の思い出】【場所】 ジョバン二の切符
サウザンクロス。青年達が降りる場所。天上へ行くことができる。旅人たちは十字架に向かって祈る。十字架の近くの天の川をひとりの神々しい白いきものの人がわたっていた。見えない天の川のずうっと川下に青や橙やもうあらゆる光でちりばめられた十字架がまるで一本の木という風に川の中から立ってかがやきその上には青じろい雲がまるい環になって後光のようにかかっている。
賢治の創作期は、第一次大戦前後に当り、太平洋のドイツ領地域への日本の南方進出が行われた。北原白秋、萩原朔太郎にも南洋憧憬を見いだすことができる。南十字星はそうした南洋憧憬の象徴でもある。この星座の近くには天の川の暗い部分、石炭袋(暗黒星雲)がある。(参考:宮澤賢治語彙辞典673p)
(北十字 ・ 十字架)
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