外国の山との比較
なぜ富士山だけがこのような問題を抱えることになってしまっているのだろうか。外国の、富士山と同じ状況にある山と比較してみよう。
外国の国立公園を訪ねると、入山するのに20ドル等といった高額入山料がとられる。つまり簡単には入山できないのだ。入山に対する意識が日本と諸外国ではまったく違うという事が分かる。限られた人、本当に入りたい人しか入れないため、し尿の持ち帰りを呼びかけても、観光客・登山客数の減少にはつながらない。しかし、富士山は山が商売の一手段として使われているため状況が異なるといえる。
次に、外国では自然遺産についても、きちんと道路舗装がされていて、その道を外れて行動をしした場合、監視員が注意したり、罰金を要求されたりなどと非常に厳しい。そのため、登山客・観光客共に、不法に伐採するといった行為には及ばないのである。それに対し、富士山にも、乗り入れ禁止区間内のオフロード車・バイクの乗り入れは罰金30万という法律があるようだが、過去立件されたのは静岡県側で1回という悲惨な状況だ。
また、それだけでなく、海外の国立公園の敷地の97%は国有の敷地となっている。しかし、日本の国立公園は20%のみが私有地となっていて、個人が自由にその土地を利用してもいいことになっている。つまり、国が富士山の環境改善に乗り出そうとしても、そこを所有している人たちがいるために、強制できないのである。
日本の問題はそれだけでは留まらない。日本の国立公園は、管理が環境省、公園内の国有林は林野庁が所有し、公園内の文化財は文化庁が、とばらばらに管理されているため、決定事項は3つの機関を通って初めて実際に動き始める。そのため、いくら環境改善策の方針を立てたとしても、対応が大変遅いのである。
このように、富士山(日本の国立公園)と諸外国の国立公園とでは、遺産に対する根本的な姿勢が異なるのだ。