富士山が抱える、最大の問題はこのし尿処理問題といえる。スバルラインの開通により、富士山は観光地化した。年間3000万人もの観光客、30万人の登山客が訪れるようになった富士山は、し尿処理を今までと同じように自然浄化にまかせた放流方式をとろうとした。
放流方式とは、微生物の分解能力にたよる処理の仕方である。この方式は富士山のように高冷地に位置する場合、微生物の分解能力が衰えてしまうので、困難な場合が多い。以前のように、観光客・登山客が少ない場合では有効である。しかし、観光客の増加による多量のし尿は、自然に浄化できるキャパシティーをはるかに超えてしまい、「白い川」と呼ばれるほどの、トイレットペーパーのあとができてしまうようにまでなってしまった。
これに対する対策は以前から練られてきたものの、富士山の環境が厳しいため、なかなか適する環境対策が見当たらないのである。
まず、他の国立公園に指定されている山々では、し尿処理は、ふもとまでし尿を運び、それから処理をするやり方を取っている。確かに、山で出された、自然には発生しない物質は、山の外に運んでから処理するのが適切だ。しかし、もとより、観光客、登山客が3000万人までにも及ぶ山は他に例を見ない。加えて富士山周辺は、乱気流が多く、ヘリコプターを頂上まで飛ばすことができない
(現在重い荷物は、特殊なブルドーザーにより持ち運びしているが、多量のし尿のような重い荷物を運び下ろせる状態ではない)
また、し尿処理施設を作るには雪崩常襲地域であるために、困難である。および、他の山々同様、電力、水が自由に使える環境ではない
これらの要因により、他の山々でのし尿処理形態を適用できず、以前のままの放流式がとられ水質汚濁が進んでいく状態が長年続いた。しかし、近年あらたなトイレが開発され、徐々にし尿問題の解決の糸口が見えてきた。