葬儀中に行われた、ライチシカラ(=哭泣)とは死を悲しんで泣き叫ぶ儀礼のことです。
古く中国にも、こういった作法があったそうです。
韓国では、泣き女という職業があるほどです。

このお話ではまだ父がいるため、チセはそのままにしておきました。
ですが、女性が亡くなった時は、生前のチセを焼きます。
家が燃やせない時は、その代わりにミニチュアのチセを作って燃やします。
この儀式は死者に他界で住む家を持たせてやるという考えによります。

アイヌ民族は土葬でした。
一つの墓には何人も埋葬せず、一つの墓標は一人のために用意されたのです。
取材した白老地方の墓標は、男性が槍先の形、女性が縫い針の頭部の形をしていました。
マタンプシというのは、刺繍のついた鉢巻きのことをいいます。

家路への途中は絶対後を振り返ってはならず、また寄り道したり、泣いてもいけません。
死者が生前を想って現世に戻り、人間に取り憑いてしまうからと言われていました。
だからこそ、シノカントはこれも踏まえ、絶対に泣かなかったのです。


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