[ビサンティン美術] ビサンティン美術は、東方特有のキリスト教美術であり、 物質的・肉体的なものよりも精神的・霊的なものを求める 理知的な傾向、鮮やかな色彩などを贅沢に使うことを特徴としている。 千年以上にわたって展開するこの美術は、 他の地域に比べて変化が少なく、様式や像の一貫性を保ち続けた。
ほとんど見ることができない。 しかし、サン・タポリナーレ・ヌォーヴォ聖堂の上部の壁には、 奇跡、受難、復活を主題とするキリストの話や、 旧約聖書に登場する人々の全身立像、 聖母子へ勝利の冠を捧げるために進む殉教者(じゅんきょうしゃ)や 乙女の行列が、上下三段に分けて表されており、 キリスト教の新旧約主題に宮廷の儀式が組み合わされているのがわかる。 また、サン・ヴィターレ聖堂の壁のモザイクには、 聖職者などをしたがえ、参列するユスティニアヌス大帝と 皇妃テオドラの姿が表されている。 左右対称性を重視した正面向きの人像には、 動きを排除することによって対象の精神的強度、超越(ちょうえつ)的性格を 表そうとする、特有の表現を見ることができる。
この時代の優れたモザイクである神母像が見られる。 また、写本装飾、金銀細工や象牙浮彫などの工芸品にも、古典的な様式 作品が見られる。 11世紀後半には華やかな宮廷趣味と人文主義的な伝統がひとつになった 独自の美術を生み出した。ユーゴスラヴィアのネレズィ修道院聖堂の 哀悼(あいとう)やモザイク、 あるいは写本装飾、工芸品などに、この時代の注目すべき作品が見られる。 |