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非結核性抗酸菌



結核の原因である結核菌の仲間を、抗酸菌(こうさんきん)といい、
結核菌以外の抗酸菌で引き起こされる病気が、非結核性抗酸菌症です。

かつては結核菌によるものを定型的と考えていたので、非定型抗酸菌症ともいわれていました。
結核との大きな違いは、
・ヒトからヒトへ感染(伝染)しないこと
・病気の進行が緩やかであること
・抗結核薬があまり有効でないこと
などがあります。

結核の減少とは逆に発病者が増えてきており、確実に有効な薬がないため、
患者数は蓄積され、重症者も多くなってきています。
また、HIV感染者への感染(エイズ合併症)が問題になっています。

原因
非結核性抗酸菌が原因です。

非結核性抗酸菌にはたくさんの種類があり、
ヒトに病原性があるとされているものだけでも10種類以上があります。
日本で最も多いのはMAC菌(マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ)で、約75%を占め、
次いでマイコバクテリウム ・キャンサシーが約15%を占め、その他が約10%を占めています。

全身どこにでも病変をつくる可能性はありますが、結核同様、ほとんどは肺の病気です。

発病様式には2通りあります。
ひとつは体の弱った人あるいは肺に古い病変のある人に発病する場合。
もうひとつは健康と思われていた人に発病する場合です。

症状の現れ方
自覚症状がまったくなく、胸部検診や結核の経過観察中などに偶然見つかる場合があります。
症状として最も多いのは咳で、次いで、痰、微熱、全身倦怠感(けんたいかん)などです。
進行した場合は、呼吸困難、喀血(かっけつ)、食欲不振、やせ、発熱などが現れます。
一般的に、症状の進行は緩やかです。ゆっくりと、しかし確実に進行します。

検査
喀痰などの検体から非結核性抗酸菌を見つけることにより診断されます。
ただし、本菌は自然界に存在しており、たまたま喀痰(かくたん)から排出される(偶発排菌)こともあるので、
ある程度以上の菌数と回数が認められることと、臨床所見と一致することが必要です。
菌の同定は、遺伝子診断法により簡単、迅速に行われるようになっています。

治療の方法
結核に準じた治療を行います。
最も一般的なのはクラリスロマイシン(CAM)リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)、
ストレプトマイシン(SM)の4剤を同時に使用する方法です。

しかし、この方法による症状、X線像、排菌の改善率は約50%にすぎません。
その後再び排菌する例などもあり、全体的な有効例は約3分の1です。
副作用の出現率も3分の1程度あります。
確実に有効な治療法がないので、患者数は増え、漸次進行例が増えてきているのが現状です。
呼吸器科医が現在最も悩んでいる疾患のひとつです。

非結核性(非定型)抗酸菌症に気づいたら?
結核に理解のある呼吸器科医あるいは結核療養所を受診するのがよい。
生活は普通どおりにできますし、ヒトからヒトへ感染しないので、
自宅で家族といっしょに生活してもかまいません。

非結核性抗酸菌は水や土壌など自然界に存在しており、それが感染するということは、
体が弱っている(免疫が落ちている)ことが考えられるので、むしろ体力を増強させるような生活が望まれる。
治療に関しては、薬は結核の時よりはるかに長期間服用する必要があります。
したがって、積極的に治療を行うという医師と、消極的な医師がいます。