知る 3
「ごめん、前払いとか、いろいろ状況が分かってなくて……」
「目……全く見えないの?」
「うん、生まれつき。ってこれ、前も言ったよね」
「お待たせいたしました」
ちょうどそのとき、店員がクレープを2つ持ってきてくれた。
俺は両方受け取り、レイの手を、レイの頼んだチョコバナナに添えさせる。
「わ〜い♪いただきます♪
―――……ん〜!おいしい〜」
「ほんとに甘いもの好きなんだな〜」
レイの様子を見て、俺はしみじみとつぶやいた。
「うん!甘いものってね、匂いもすごく甘くて、幸せな気分になれるんだよ♪」
「へぇ……」
匂いなどそこまで気にしたことがなかったので、目を閉じて、少しクレープに鼻を近づけてみる。
「確かに、そうかも」
「でしょー?」
これは新発見だ。
匂いだけで感じる世界も、なかなか面白いかもな。