1、自然との闘い
日本は南北に長く、中央に大きな山脈があり、東南アジアからの季節風の影響も受けるなどの理由で気候や日照時間は千差万別です。よって気候や日照時間などのそれぞれの地域に合った品種が開発されたのです。
イネはもともと熱帯気候を好みます。ところが、年によっては夏に気温が上がらないことがあります。すると、イネがうまく育たないことがあります。「
冷害」です。
これまでの歴史で、日本人は繰り返し冷害に苦しめられてきました。江戸時代に起きた「天明の大飢饉」、最近では1993年に起きた「平成の米騒動」などは、この冷害によってイネが十分に生育しなかったことが原因です。このように、「
寒さに強いイネ」を作ることは、日本人の悲願でもありました。
明治維新を遂げて、近代化が進む中で、安定した食物供給が求められる中で、イネの品種改良も進みました。かつては、寒さに強いイネを集めて、自然交配を繰り返すしかありませんでしたが、20世紀には
人工交配の技術も開発され、より「寒さに強いイネ」が作られるようになったのです。
2、よりよい味を求めて
環境の変化に適応することと同時に、よりよい味を追求する動きも並行して行われてきました。例えば、イネの品種の一つである「ジャポニカ米」と「インディカ米」とでは、以下のような違いがあります。
ジャポニカ米
・外見は白く透明感があり、短く丸みがある
・水分を含ませそれに熱を加えると粘りやツヤが出る
・冷めても劣化しにくい
・世界のコメの15%ほどを占める
インディカ米(タイ米)
・細長く水分量が少ない
・砕けやすい
・独特の匂いがあるため香辛料をきかせて食べることが多い。
・世界のコメの80%以上を占める
日本では伝統的に「ジャポニカ米」を生育していたので、「インディカ米」の、パサパサした食感や独特の臭みが受け入れられず、
モチモチとした食感や適度な風味が求められるようになりました。
なので、そうした観点で「
おいしいコメ」を作るために、品種改良を重ねていったのです。