コミュニティバス
日本各地には、「公共交通空白地域」と呼ばれる場所が少なからず存在します。この「公共交通空白地域」とは、最も近いバス停から600m・鉄道駅から1km圏外に位置する地域のことであり、可住面積は九州地方の面積に匹敵する3万6433平方kmと言われています。そこで、広大な「公共交通空白地域」を解消するための手段の1つとしてよく挙げられるのが「コミュニティバス」です。
コミュニティバスとは、生活交通の維持が困難な公共交通空白地域等における移動環境を改善するために、地域住民の移動手段を確保する手段として市町村などが運行している公共交通サービスです。市町村などが運行の主体となっているため、路線バスに比べそれぞれの地域の事情に合わせた柔軟なルート設定が可能です。例えば、住宅街内の細い路地などでも運行できるため、交通の便が良くない地域の住民にも確実に交通手段を提供し、生活の質を上げることが期待できます。
コミュニティバスの成功例
このようなコミュニティバスの成功例として、東京都武蔵野市周辺を走行する「ムーバス」が挙げられます。「ムーバス」は日本初のコミュニティバスとされ、特に高齢者の利用を促進するために運賃を従来の200円から100円に値下げしたことで多くの利用者を獲得し、結果的に多大な利益を上げたことで注目を集めました。
この「ムーバス」の成功事例は、全国各地の交通空白地域において理想的なものでした。そして、「ムーバス」と同じ100円と気軽に利用できる安価な運賃の下で、路線バスではカバーしきれない地域の交通の便の改善を試みる自治体が増えています。
しかし課題が残るコミュニティバス
一方で、過疎地域には、コミュニティバスなどの運行に要する経費負担や参加協力が可能な有力企業や団体が比較的少ないといった課題も考えられます。また、「ムーバス」の成功は武蔵野市の人口が多く利用者を獲得しやすいなどの特殊な事情があり、人口の少ない過疎地域などでも同様に運行が成功するとは限りません。実際、各地で運賃を100円に設定したにもかかわらず、利用者が予想外に増加せず結果として運行を打ち切ってしまったケースも多く見られます。
まとめ
よって、コミュニティバスは路線バスなどの運行ルートを補う形で、「公共交通空白地域」に住む人々にも交通手段を提供できる方法と言えます。しかし、人口密度の違いなどの地域差によっては、必ずしも全ての自治体において安価な運賃設定を行っても利益を出すのに十分な利用者を確保できず、最終的に経営が立ち行かなくなる場合もあるため、各地域の事情に合わせた運行形態を構築していく必要があります。