補助金
補助金制度は、収益性の問題によって運行会社単体では維持することが困難な鉄道・バス路線の維持のため、自治体や政府が補助を行う制度のことです。補助金制度の例としては、国土交通省による赤字路線バス運行経費の4割を負担する制度が挙げられます。公共交通機関の利用者が減少傾向にある現在では、特に地方の鉄道・バス路線が経営の困難によって存亡の危機に立たされており、路線存続のために補助金制度を利用しているケースは日本全国に数多く存在します。公共交通機関の運営は単なる私企業の利益追求にとどまらない、公共性の高い事業のため、国や自治体は積極的な支援を行っています。しかし、あまりにも収益性が悪い、路線を維持するメリットが全くないと判断された場合、支援の打ち切りなどに繋がる場合があります。例として、先述の国による補助金は「複数市町村にまたがり、かつ充分な利益が見込める路線」であることを条件として支給され、支援対象がその条件に当てはまっていないと判断された場合は支援が打ち切られる場合があります。
メリット
補助金制度のメリットとしては、補助金が公共交通機関の維持につながることが挙げられます。地域から公共交通機関が撤退することは利便性の低下、ひいては地域の衰退につながりかねない、その地域の社会にとって重大な事態です。補助金の交付によって本来存続が難しい路線が維持されることは、地域社会の維持や発展という面においてに大きなメリットがあると言えます。
デメリット
デメリットとしては、支援のために少なからず税金を投入することになることが挙げられます。国による支援はまだしも、ただでさえ財政状況が良いとは言い難い多くの地方自治体にとって、税収の一部分もしくは大部分を鉄道・バス会社への支援に回すことは大きな負担になり得ます。また、本来は公共サービス等に投入されるべき税金が支援に使われることで、\自治体による公共サービスの質が低下し、住民が損害をこうむるという本末転倒な状況にもなり得ます。
補助金制度は、それによって収益改善へとつながる施策という訳ではなく、あくまで擦り傷に絆創膏を貼るが如く応急的な施策であるということが注意すべき点です。運行会社が補助金に頼るばかりではなく自助努力によって収益改善に取り組まなければ、せっかくの補助金を無駄使いした結果、収益悪化に歯止めがかからずにそのまま補助金が打ち切られ、倒産・路線撤退につながりかねません。例えば和歌山県にかつて存在した鉄道会社「野上電鉄」は、多額の補助金を享受しながらも合理化や経営体質改善のような収益改善施策を全く行わず、路線条件上使用できない車両を購入して一度も走らせないまま廃車にするなどのずさんな経営を続けました。結果として、1992年に補助金を打ち切られ1994年に倒産、同社の保有していた鉄道路線は全廃され、地域に多大な悪影響を残しました。