キララちゃんバス(茨城県土浦市)
キララちゃんバスは、茨城県土浦市で運行されているコミュニティバスです。
行政主導で行っているのではなく、地元商店と協働し、地域主導で運営しているコミュニティバスです。
「特定非営利活動法人 まちづくり活性化土浦」が運営し、土浦市と、土浦商工会議所が事業支援を行う形をとっています。運行は、関東鉄道に委託されています。
商店との連携とは
具体的には、コミュニティバスに乗車し、地元の商店(スーパー含む)で買い物すると、コミュニティバスの運賃補助券がもらえるという仕組みです。
今回は、その仕組みを実際に使ってみて、商店と協働するコミュニティバスの実現性、未来を探ってみました。
乗車レポート
茨城県土浦市まで
まずは、私が土浦市まで通った道のりを紹介します。
茨城県土浦市は、霞ヶ浦の沿岸に位置する街です。土浦市の玄関口はJR常磐線の土浦駅で、東京都心から普通電車で一時間ほどで到着します。東京への通勤も十分可能な距離です。
私は、神奈川県藤沢市の学校(慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部)から直接土浦駅へ向かいました。小田急線、地下鉄千代田線、常磐線を乗り継ぎ、二時間以上かかりました。
土浦駅~乗車
土浦駅に到着し、事前に調べておいた時間の、東口発のキララちゃんバスに乗車しました。キララちゃんバスは、行先に合わせて西口と東口の両方から発着しており、循環型の運行経路となっています。
バス停には、手作りと思われるベンチが設置してありました。
5分以上遅延し、キララちゃんバスがやってきました。バス停にバスロケーションシステムのQRコードがあり、遅延状況がすぐにわかります。位置情報は、地図に正確な位置が表示され、常に更新される仕様のもので、わかりやすさ、情報提供性に優れているシステムであると感じました。
運賃は、均一の150円でした。
キララちゃんバスの外観は写真の通りです。独特なラッピングが施されています。
「土浦駅東口」バス停 | 時刻表 |
土浦駅東口の様子 | バス停に設置されているベンチ |
キララちゃんバス |
バスロケーションシステム バスの現在地がリアルタイムに更新されます。 |
乗車中
バスは発車すると、霞ヶ浦沿岸の道を通り、住宅地の中を進んでいきます。
住宅地で客を下ろし、乗せたのちに、バスは再び土浦駅周辺に戻りましたが、近い東口には到着せず大回りし線路をまたぎ、少し回りながら西口へ向かいます。若干、非効率的な運行形態であると感じました。
乗客数は、バスに2,3人のっている状態が続く、といった感じでした。
バスからは霞ヶ浦が見えました。 |
下車
地元の商店で買い物をして運賃補助券をもらうために、協賛商店が沢山あるエリアの「川口町モール505入口」バス停で下車しました。
運賃補助券をもらうには、バスの運転手から「当日乗車証明書」を受け取る必要があります。
下車したバス停 | バスの後部 協賛企業などの広告が多数あります。 |
商店で買い物
協賛商店は沢山あるので、どこの店で買い物をしようか、正直迷いました。
バス車内に商店の紹介のリーフレットがあったので、それを見て、地元のパン屋さんに買い物に行くことを決め、買い物をしました。
1000円以上買い物し、先述の「当日乗車証明書」を店の方に渡すと、100円の運賃補助券が貰えるシステムです。
有効期限は各年度末までに設定されているので、帰りのバスに使うこともできますし、違う日のお出かけのバスに使うこともできます。
買い物をした後は、土浦駅まで歩きました。
商店が多数あるエリアのパン屋で買い物をしました。 | 購入したパン (翌日、自宅にて撮影) |
乗車補助券「キララ」 | 「キララ」の裏面。 協賛店には左側のデザインのシールが貼ってあります。 |
土浦駅にて
先述した通り、協賛商店は非常に沢山あります。その中の一つに、駅直結の大型スーパー、カスミがあります。
小さな地元密着型の商店だけではなく、大型スーパーで買い物をした場合にも運賃補助券を貰うことができます。
利用頻度が高いと思われる、スーパーで買い物をしても補助券を貰うことができるのは、とても実用性が高いと感じました。
その後、帰路につきました。
駅直結のスーパー「カスミ」 |
考察
私たちが「解決案」のページで提案している、「商店が出資」に近い施策を行っているコミュニティバスとして、今回は「キララちゃんバス」を実地調査の対象にしました。
まさに、バスに乗り商店で買い物をすれば補助券が貰えるという取り組みは、非常に素晴らしい取り組みです。
また、先述したように、多くの人が用いる駅直結の大型スーパーとも提携していることも、コミュニティバスの利用を高める取り組みとして特に評価できます。
土浦市のように、地元経済と相互の関係を築きながらコミュニティバスの運営を目指すことにより、より実用的で持続可能な運営が可能となります。
故に、このような取り組みは、全国で可能であれば導入するべきであると言えます。
なお、「商店が出資」の観点で、さらにステップアップした私たちの提案を、結論のページに掲載しています。
また、土浦市のコミュニティバスは、利用者への情報提供の面では大変に優れていると考えます。先述したように、とても高度なバスロケーションシステムも整備されていましたし、公式ホームページも、時刻表や運行ルートが分かりやすい造りとなっていました。皆様も、アクセスしてみてはいかがでしょうか。
しかし、土浦市のコミュニティバスには、「ルート設定が悪い」という欠点があると考えました。
乗車レポートでも述べたように、駅を目前として大回りするなど、交通手段として使いにくい、速達性に優れないルートが散見されたからです。
故に、なるべく直線的になるようなルート変更をし、「ムーバス」のように、市外に出かける住民も駅への交通手段として使いやすいようにするべきです。