課題

都市鉱山にはメリットがたくさんある一方で、多くの課題を抱えています。

回収率の低さ

「資源の現状」「都市鉱山の意義」を読まれた方は都市鉱山の重要性がお分かりになったかと思います。 しかし日本では都市鉱山の考え方に基づく小型家電の回収はなかなか進んでいません。 実際日本は「2018年までに小型家電回収量を14万トンにする」という目標を掲げましたが、達成できませんでした。

その理由の一つに知名度の低さが挙げられます。 私たちが実施した校内アンケートでは、都市鉱山について「詳しく知っている」または「少し知っている」と回答した人は35.2%でした。 都市鉱山がまだまだ広まっていないことを実感しました。 これは政府や自治体の宣伝不足にあるということは否めません。 さまざまな媒体やイベントを通して都市鉱山を広める必要があります。 中には個人情報が漏れることを気にしたり、写真を思い出として保存しておきたいと思ったりして古い携帯をリサイクルに出さないという人もいます。 しかし個人情報漏洩については回収において厳重な対策がなされており、心配する必要はありません。 また、今使っているパソコンなどにデータを移したり、クラウドに保存したりすることで、思い出を残しておくことができます。 これらのことから、家に残っている廃電子機器は積極的にリサイクルに出すべきなのです。

プラチナルシストのアイコン
プラチナルシスト
思い出は心に残っていれば決して消えることはないのさ。

多くの金属を海外から輸入してきた日本には、現在豊富な金属資源 金属資源 鉱物資源の一種。さらにレアメタル、マイナーメタルに分けられる。 が残っています。 特にアンチモンは世界埋蔵量の約二割、金も一割以上と資源の可能性として無視できないほどの量になっています。 しかし、これらの資源の全てがリサイクルできるわけではありません。 これらの資源のうち管理者がいてきちんと保管されているものはリサイクルできますが、そうでないもの、例えば埋め立て地に埋められてしまったものなどはリサイクルすることが困難で、なかなかリサイクルされることがありません。 そしてこのリサイクルが困難な資源が国内の資源の多くを占めているのです。 つまり今の状態では日本はどれだけ頑張っても国内の資源の一部しか回収できないのです。 管理者のいない、リサイクルが困難な資源をいかに減らせるかということが今後の課題になっていきそうです。

コスト問題

「回収率の低さ」問題を無事にクリアして、たくさんの使用済み家電が手に入ったとしましょう。 さあ早速リサイクルだ!と言いたいところなのですが、実はそのリサイクル自体にも課題があるのです。 使用済み家電をリサイクルして資源にするのに手解体や粉砕、選別などさまざまな工程を踏まなければなりません。 特に手解体には基盤を取り出す作業があり、また、リサイクルに運ばれてくる携帯電話の種類はバラバラなので多くの人手を要します。 手解体の工程に機械を導入するという話もありますが、携帯電話はいろいろな種類がある上、情報保護のため分解しづらく設計されていることが多いのでどうしても人の手が必要なのです。 また、手解体をせずにそのまま精錬工場に送られる場合もありますが、それだと処理にかかる費用が増えてしまいます。 さらに粉砕や選別にも多くのエネルギーが消費されるので、リサイクルには莫大な費用がかかることになります。 一方で、使用済み家電には多くの種類の金属が含まれていますが、そのひとつひとつは極少量です。 そのため、使用済み家電から採れる金属の価格とリサイクルにかかるコストを考えるとリサイクルで利益を上げることは難しく、都市鉱山に関わる企業がなかなか増えないという事態になっています。 都市鉱山を広めるためには、この「コスト問題」を解決しなければならないのです。

リサイクルのリスク

都市鉱山は廃電子機器に含まれるレアメタル レアメタル 1.地殻中の存在量が比較的少ない元素 
2.単体として取り出すことが技術的に困難な元素
3.資源の産出国が偏在している
を満たす元素のことを言い、現代の産業に欠かせない”産業のビタミン”と呼ばれる。別名マイナーメタル。
ベースメタル ベースメタル 鉄、銅、亜鉛、アルミニウムなどの精錬が容易で大量に存在する金属のこと。別名メジャーメタル を資源として捉えるものです。 しかし、廃電子機器はレアメタルやベースメタルだけで出来ているわけではありません。 実は廃電子機器の構成成分の大部分がプラスチックで占められているのです。

携帯の成分構成
より引用

このプラスチックがリサイクルにおける大きな問題となっています。 プラスチックのリサイクル率は世界平均で9%と低く、ほとんどが廃棄物として処理されるか、またはサーマルリサイクル サーマルリサイクル 廃プラスチックを燃焼させることで発生した燃料をエネルギーとして回収する方法。ただしマテリアルリサイクルには含まれない。 に回されています。 廃棄物として処理するにはそれなりのコストがかかる上、サーマルリサイクルに関しても排ガスや発がん性物質などの発生への懸念からあまり推奨されていません。 つまり、リサイクルは有用な金属よりもはるかに多くの廃棄物を排出し、さらにそれを適切に活用できていないのです。 また、リサイクルによって有害物質が出ることがあります。 これは廃電子機器の中に有害物質が含まれているものがあることから起こります(例えば初期のパソコンのCPUの冷却板接合には人体に有害な水銀ペーストが使われています)。 この有害物質が途上国の処分場と同じように環境を汚染しているのです。 私たちは有害物質を安定化させる処理技術を開発しなければなりません。

有害物質の恐ろしさがわかって頂けたでしょうか? このような有害物質は金属リサイクルでも発生します。 そのため、リサイクルで生じる有害物質の適正処理は非常に重要な問題です。

品位の低さ

「そもそも品位 品位 鉱石中に含まれる目的の鉱物・金属の含有率を示す値。 って何?」と思った人もいるかもしれません。 品位とは鉱石の中に含まれている有用な元素の量を指します。 「濃度」という言葉と同じ意味だと考えてもいいでしょう。 品位が高いほど、同じ量の鉱石からより多くの有用な金属が取り出せるということです。 そして、この品位こそが都市鉱山がリサイクルするときに直面する大きな問題なのです。 それは天然鉱山と比べて品位が低いので天然鉱山との競争で負けてしまうためです。 「スマホとかパソコンの中にはいろんな金属がぎゅうぎゅう詰めになっていてむしろ品位が高いのでは?」と思う人もいるかも知れません。 その考えは正しいです。 たしかに1つ1つの製品を見れば品位は天然鉱山よりも高いです。 しかし、都市鉱山の天然鉱山との大きな違いとして天然鉱山は一つの場所に集まっているのに対して都市鉱山は各家庭に製品が分散してしまっているという点が挙げられます。 したがって都市鉱山をリサイクルする際にはまず散らばってしまっている製品を集めないといけません。 このために、1つ1つの製品で言えば品位は高いが、全体としてみると品位は低いということが起こるのです。 ただリサイクルに扱う量を増やすためというだけでなく、天然鉱山と市場で競争できるようにするためにも、回収率を上げることは解決しなければならない問題です。 この品位の低さの解決にはいかに分散を緩和するかが鍵になります。

まとめ図解

都市鉱山にはさまざまな課題が絡んでいますね... なかなか進まないこともナットクできます。

参考文献

・『図解よくわかる「都市鉱山」開発』(原田幸明・醍醐市朗、日刊工業新聞社・2011年8月1日)
・PRTIMES「スマホのリサイクル回収率は17%。都市鉱山スマホを再資源化へ」
・三井住友フィナンシャルグループ「「都市鉱山」に眠るレアメタルの資源化に向けて」
・NIMS「都市鉱山関係データ」
・「都市鉱山の蓄積量推定」に関する Q&A
・petpedia「41 Eye-Opening Recycling Statistics for 2021」
・イタリア・セベソの化学工場での爆発
・環境用語「セベソ事件」
・The New York Times「Toxic Waste Boomerang: Ciao Italy!」
・The Washington Post「AFTER DUMPING ON NIGERIA, ITALY TAKES IT ALL BACK」
・ecoo「豊島事件が残した課題」
・E-VALUE「豊島の不法投棄問題を振り返る」