海外の特殊な投票例
海外では、日本ではあまり行われない、もしくは存在しない特殊な形態の投票が行われています。このページではその代表例として、ニュージーランドの国民投票とスウェーデンでの「学校投票」を取り上げます。
ニュージーランドでは、2020年10月17日に、大麻使用の合法化と安楽死制度の是非を問う国民投票が全土で行われました。18歳以上の国民と永住者を対象として、国政選挙と同時に実施されました。それぞれ可決されれば、医師の同意を得たうえで投薬による安楽死の選択が可能になり、投票日までの過去12か月間において、総人口の15%にあたる約59万人が違法使用していた大麻が合法的に服用できるようになります。こういった国論を二分する法律は、日本では憲法改正以外では与野党間での激しい議論によって国会で採決または廃案となることが多いですが、ニュージーランドなどの諸国では、このように採決の最終的な判断を国民に委ねることがあります。
結果は、安楽死制度は賛成65.1%、反対33.7%と大差で可決されたものの、大麻の合法化に関する法律は賛成48.4%、反対50.7%と僅差で否決されました。国民投票の結果のみで決定する点、極めて民主的であり、同じ民主主義国家である日本でも採用すべきと思われるかもしれません。しかし、日本の人口はニュージーランドの約25倍もあるので、国民投票を行うためには大規模なコストと労働力が必要になります。よって、日本の国単位での国民投票は、憲法改正の是非を問う投票に限られているのです。
次に、スウェーデンの中学校・高校のイベントの一環である「学校投票」という制度を紹介します。これは4年ごとに行われるスウェーデンの国政選挙とEUの議会議員選挙と同じタイミングで行われ、すべて生徒主体で運営されます。しかし、模擬選挙とはいえ、実物の投票用紙が配られたり、集まった投票が国全体で集計されるsなど、極めて徹底的に模倣されています。さらには、スウェーデン政府から学校投票プロジェクトへの支援が行われるので、学校側が負担する経費は少量にとどまっています。こうして青年期の子供に実際に投票を行う経験をさせることによって、政治に関心を持たせ、高い若者の投票率を生み出しているのです。
もし日本でも学校投票を行えば、若者の投票率は大きく改善されることが見込まれます。しかし、先ほど述べた国民投票の問題のように、日本の中高校すべてに対して実施するとなると莫大な費用がかかります。仮に学校投票を行う法案が国会へ提出されたとしても、より重要な出費が多々あるなどといった理由で否決されてしまうでしょう。とはいえ、投票制度に関してあまりよく知らないまま成人して、投票権を放棄してしまう人が多い現状を変えていくことは非常に重要なので、模擬選挙のようなアクティビティを各学校単体で取り入れるよう、教育指導要領を改正することがより現実的な案と言えるかもしれません。
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