北ヨーロッパでの政治参加促進のための取り組み

デンマークを始めとする北ヨーロッパ諸国では、国政選挙で軒並み7割~8割と高い投票率を誇り、日本の約1.5倍となっています。中には、日本と真逆の、高齢者よりも若者の投票率が高い国も存在します。では、どのようにしてこのような高い投票率が得られているのでしょうか。このページでは、朝日新聞が取りまとめた北欧4国(デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー)の取材に基づいて、高い投票率の背景について見ていきます。

まず、北ヨーロッパ人の日常生活において、国政に対する意識が浸透していることが投票率を上げる大きな要因となっています。例えば、食事や家族の団らんでの会話の中に、政治についての話題が織り込まれます。これは、食事中の政治に関しての会話をタブー視しているフランス人や、政治の話そのものに対して嫌悪感を抱く傾向にある日本人とは大きく異なります。また、学校の授業においても政治は重視されています。この朝日新聞の記事によると、ニュースや新聞を用いて時事問題について議論を行い、その際には複数のソースを比較して、より正確な情報を収集する能力を養います。また、時にはあらゆる党派から政治家が学校を訪問して、特別授業を行うということもあるようです。さらに、「学校政策」と言われる、給食費、金銭・デジタル格差の解消やいじめ問題への取り組みなどに、生徒主体で政治家と議論する場も設けられています。日本では、選出された生徒が集まって生徒会を形成して、学校をよりよくするために先生などの大人に働きかけます。しかし、この作業は多くの場合生徒の目に映らない場所で行われており、生徒会の実際の仕事風景を生徒は把握することができません。一般生徒は適任だと思う人に投票し、あとは当選者に任せるのみ。現在の日本人の政治に対する意識とよく似ています。このような類似性が、低い投票率となる大きな要因の一つなのではないでしょうか。

また、スウェーデンと日本の若者の政治に対しての受け止め方の違いについてまとめた論文では、自身の行動が政治に反映されるかどうか、という点について大きな差異があると結論付けられています。日本では、自由民主党が戦後の大半の期間において政権を担っており、国政選挙によって政治が大きく変わるといった事象はあまり見られません。しかし、北欧諸国では、男女平等な社会やLGBTの容認など、若者の声によって日本にとって未達成の政策を続々とクリアしました。2019年、フィンランドで世界最年少の34歳の女性首相が誕生したことはその象徴とも言えるでしょう。よって、スウェーデンの若者は自分の1票によって政治が変わることを知っており、ゆえにたとえ政治にあまり関心がなくても、投票には行こうという意志が生まれるのです。

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